今日の問題提起:
バッハが楽譜に書かなかったことをするのは勇気が要りますよね? そもそも「バッハは楽譜どおりに弾かなければいけない」と思っている人も多いかもしれません。でも、楽譜どおりに弾いたのでは何だかつまらないとか、物足りないとか、そんなふうに感じることもあるはずです。そんなとき、バッハの時代には当たり前だった演奏習慣を知ることで、解決策が見えてきます。
ビデオの要約:
- バッハの3声のシンフォニアの原典版をよく見ると、自筆譜には装飾音が無くても、弟子の楽譜が装飾音で埋め尽くされている曲も多く、これはバッハによる「装飾音の付け方のレッスン結果」と考えられている
- 主題が長い音符からなるこのフーガでは、一番聞いてほしい主題が一番目立たない
- 主題に聴き手の注意を集めるために、主題にたくさんの装飾音を付ける工夫が可能
- 主題だけでなく、バッハの時代にはクレッシェンドを伴って演奏されていたタイ音符も、装飾音によって強調できる
では、以上の解説を踏まえて、この曲を通してお聴き下さい。
バッハを科学的に練習しましょう
どうしてバッハの曲はいつも練習に時間がかかるのでしょうか?
それは、複雑に入り組んだバッハの曲を練習するというのは、指の筋肉や運動神経を訓練することではなく、今まで使ったことのない脳の回路をそのつど新たに作ることだからです。
では、曲が弾けるようになるとき、頭の中では何が起こっているのでしょうか?
「曲が弾ける状態」とは「運動の制御が大脳から小脳に移管された状態」です。それは、同じ部分の反復練習で達成されます。でも、やみくもに練習を繰り返しても小脳は効率よく運動を記憶してくれません。必要なのは「大脳に負担をかけない」ことです。それには「短い範囲をゆっくり繰り返し練習する」ことが決め手です。
ゆっくりの練習にじゅうぶん時間をかければ、その後テンポを急に上げても弾けてしまいます。
この小脳のすばらしい能力を意識的に活用すれば、練習効率をぐっと高めることができるのです。
練習中は間違えてはいけません。
練習中の間違いに無神経だと、練習すればするほど間違いが指に記憶されて、効率が悪いどころかマイナスです。「効率のよい練習」とは、逆説的のようですが「できる事だけを練習する」ことなのです。
さあ、あなたもバッハの練習に脳科学の知識を取り入れて、練習時間を劇的に短縮しましょう。上のビデオのような4声のフーガだって、もう怖くはありません。