練習すると肩が凝りますか?

あなたは楽器の練習をして肩が凝りますか? 答がYesなら、何とかしないと危険ですよ!

そういう私自身、駆け出しの頃はすごい肩凝りでした。1時間練習するだけで、肩も首も背中もパンパンでした。変な弾き方のせいでしょっちゅう腱鞘炎も患っていて、あのまま続けていたら今頃楽器を弾けない体になっていたと思うと恐ろしくなります。でもそのころの私は毎日体中に湿布を張りまくって、それが当たり前だと思っていたんです。「体が痛くても練習するのがプロなんだ」って。

やがて妻と出会って結婚して、これは「当たり前のこと」ではなくて「あってはならないこと」なんだと知らされました。そんな弾き方では音が汚いし、音楽もガチガチです。単なる体の痛みの問題ではなくて、芸術上の大問題だったんです。そして、妻がかよっていたバレエ教室に連れて行かれました。男は私だけだったので、ちょっと恥ずかしかったですけどね。

その効果はすぐに現れましたよ。長時間練習しても肩が凝らなくなったんです。練習だけでなく、車を長時間運転しても肩が凝らなくなりました。原因はどちらも同じで、要するに姿勢が悪かったんです。ああ、何て気持ちがいいんでしょう! 何時間でも練習が続けられるなんて。「姿勢が悪い」といっても、ただ背筋を伸ばすとか、そういう単純な話ではありません。どの筋肉をどう使えばあのバレエ特有の美しい立ち姿勢が取れるのか、それは教えてもらわないと分からないことです。

バレエ教室は3年くらいかよって辞めてしまいましたが、どうすればいいのか理屈で分かったので、それからもずっと肩凝りとは無縁になりました。音も少しずつきれいになってきたし、音楽も少しずつ流れるようになってきました。

それがです、数年前からまた調子がおかしくなってきたんです。まず車の運転中に肩が凝りやすくなりました。練習でも、特に難しい曲を短い日数で仕上げなければならなくて焦っていると、ひどい時はかつてのようにパンパンに肩が凝るようにもなりました。理屈ではどうすればいいか分かっていたつもりでも、頭で考えている間だけしか正しい姿勢ができてないのではダメなんですね。何とかしなければ!

で、今さらバレエ教室に戻るのもどうかと思って、前から関心があったヨガなるものを始めました。

最初は100円ショップで売っていた薄い冊子に書いてある事を真似するだけでしたが、そのうちに物足りなくなって、理屈に裏付けられたちゃんとした教科書を買いました。ちゃんとした教科書には奥深い正しいことがびっしりと書いてあります。姿勢についての所を読むと「なんだ、バレエで言っていることと同じじゃないか。」

今、毎朝チェンバロスタジオに出勤すると、まず30分間ヨガをしています。正しい姿勢とそのための筋肉の使い方を習慣付けると同時に、正しい呼吸の習慣化も目指します。午前中にする音階や装飾音などの基礎練習はヨガの呼吸法をしながらおこないます。

せっかくヨガをするので、その始めにちょっとだけ瞑想もしています。今までつい仕事に追いかけられて焦ったり、逆に怠けたりしがちだったのが、瞑想のお陰でしょうか、何事も前より落ち着いて取り組めている気がします。練習も知的に計画的に進められます。

美しい音は、美しい姿勢、美しい呼吸、美しい心から。

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練習すると肩が凝りますか?” に対して8件のコメントがあります。

  1. 小松優子 より:

    いつもありがとうございます。
    楽しく読ませて頂いています。
    肩凝りの話まったく同感です。
    自分自身も、小さい頃から肩が上がり、首が落ちる癖があり、この数年でやっと直すことができました。
    きっかけはやはりヨガです。
    体幹を意識することによって、下半身が安定して、背中を伸ばすというより立つ感じ?それによって肩甲骨にも意識がいくようになりました。
    ピアノとチェンバロは細密な動きのレベルが違うと思います(私はピアノです)が、どうぞ末長く弾き続けられますように。
    いつも有益な情報をありがとうございます。

    1. 八百板 正己 より:

      コメントありがとうございます。
      小松様もヨガが役に立ったんですね。自分のしている事が間違っていないと分かって嬉しいです。

  2. Y.M. より:

    私自身は、音楽は聴くだけですが、音楽遍歴のページを拝見すると
    美しい姿勢は、指揮、立って演奏する楽器(コントラバス)、打楽器(和太鼓)には欠かせませんし、
    美しい呼吸は、管楽器、合唱には欠かせないと思います。
    そして美しい心は、偉大な作曲家が音楽に託した物を謙虚に受け取り、自分の成長の糧とし、
    聴いて下さるお客様に伝えるために、何よりも欠かせないと思います。

    1. 八百板 正己 より:

      そうです、そのとおりなのです!

  3. 家合映子 より:

    先生、大事なことをもう一度確認させて頂き、ありがとうございます。本当に姿勢、そして心のありようも大事なのだと思います。今それが自分に少しずつ欠けてきているように思うのです。心の余裕を失いかけてきているように思うのですね。もう一度大切なことは何か、それを思い起こしつつまた一歩、歩んでみます。

    1. 八百板 正己 より:

      ありがとうございます。私こそ、ブログに書くだけでなく、しっかりと実践するように努めます。

  4. はる より:

    先日は音楽活動コンサルティングでのご指導ありがとうございました!上級者でもない自分にはそこまで必要じゃないと思っていましたが、思いきってお願いして良かったです。 
    姿勢はちょっとした意識が加わっただけですが、体に感じるところでは大きく変化しています。あと、呼吸法の練習のやり方がすごく気持ち良いです。ゆったりするから丁寧に練習できるし力まずいられます。これなら傷めた身体でも練習を続けられるなと思えて、気持ちも楽になりました。

    1. 八百板 正己 より:

      そうおっしゃっていただけるとすごく嬉しいです!
      体の使い方は、上級者ではない方々にこそ正しい情報が必要です。だって、上級者は大抵は正しい情報にアクセスできる環境にあるからです。(体の使い方の正しい情報を知らないと決して上級者になれないとも言えます。)
      「気持ち良い」のは大切なことです。ぜひその気持ちを維持してください。

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