チェンバロの音源を聴いても無駄だなんて!

いやはや、なかなかショックな話ですよ! チェンバロの音源を聴いても無駄だなんて! どうしよう!

チェンバロはキラキラした音がしますよね? これは高周波の倍音を多く含むからなんです。一つの音、例えばドの音を弾いただけでも、同時にオクターブ高いドやソの音、2オクターブ高いドやミやソの音、3オクターブ高いド・・・とたくさんの音が混ざっています。チェンバロは特にピアノなど他の楽器に比べて、この高い倍音がたくさん混ざっているんです。

そして、私はチェンバロを愛しているので、この高周波の倍音を多く含むことの素晴らしさをこう説明してきました。「高周波の音を聴くと、免疫細胞が活性化されたり、ストレスホルモンが減少したりするそうです。だから健康のためにチェンバロを聴きましょう!」

それがです、そう単純な話ではないと知ってしまったんです。

 

研究によると、超高周波の音を浴びると脳幹(脳の一番深いところにあって自律神経系や内分泌系をつかさどる所)が活性化するのだそうです。それによって免疫系が活性化したりストレスが減るというわけです。ただし、この作用を起こすには人間の耳に聞こえない5万ヘルツや10万ヘルツ以上という超高周波でないとダメなんだそうです(ちなみに人間の耳に聞こえるのは2万ヘルツ以下です)。

チェンバロを愛する私にとって嬉しいのは、チェンバロの音は耳に聞こえる高周波だけでなく、耳に聞こえない超高周波も非常に豊富に含んでいることです。特に発音直後の0.5秒くらいが多いそうです。厚さ0.2mm以下の爪が太さ0.3mmといった細い弦をはじく時の、あの独特の雑音ですね。

ところが、CDは人間の耳に聞こえない高周波を全部カットしてしまっています。つまりCDでチェンバロの音を再生しても脳幹は活性化しないという事なんです。YouTubeなんかでも同じでしょう。つまり、私のビデオを聴いていただいても、健康づくりという意味では無駄なんだと。

オーディオに凝っている人なら、「CDよりもずっと高周波の音まで記録できるハイレゾリューションオーディオ(略してハイレゾ)があるじゃないか」とおっしゃると思います。けれど、これも計算してみると分かるんですが、種々あるフォーマットの中でもよっぽど高解像度のものでないと10万ヘルツなんていう超高周波は記録できないことになります。さらに、音源がハイレゾでも、スピーカーなど再生装置の性能もあります。いずれにしても、私がYouTubeで配信しているビデオではダメということです。生のチェンバロを間近で浴びるしかないです。

 

ひとつ興味深いのは、そのような超高周波は耳では聞こえなくて、皮膚から直接体に取り入れているらしいという事です。

そのことを知って以来、私は毎日の基礎練習のうちの決まったメニュー(装飾音と音階)は譜面台も外して暗譜で練習するようにしました。譜面台や楽譜を置くと演奏者の位置ではチェンバロのキラキラした音がポロポロとした丸い音になってしまうのは、楽譜が高周波を吸収するからです。せっかく目の前で発生している超高周波をしっかり浴びたいですからね。

楽譜が高周波を吸収するくらいですから、耳に聞こえないような超高周波は衣類を通り抜けることはできないのかもしれません。なので、裸で練習でもしない限り、超高周波は顔で浴びているという事なんでしょう。そのつもりになると、練習中に何だか顔から健康の素が染み込んでくるような錯覚になります。毎日の基礎練習の時間が待ち遠しくなりました。

ということで皆さん、ご自分の脳幹を活性化して健康になるために、チェンバロを買いましょう! 買えないなら、定期的にチェンバロ付きレンタルスタジオで練習しましょう! それもできないなら、チェンバロのコンサートに行きましょう!

どれも私が直接皆さんのお役に立てないことばかり。やっぱり音楽は、特にバッハは、自分で演奏するのが一番なのです。

 

直接あなたの脳幹を活性化できませんけれど、できたばかりのビデオをどうぞ。

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チェンバロの音源を聴いても無駄だなんて!” に対して9件のコメントがあります。

  1. Y.M. より:

    おはようございます。
    10万ヘルツ以上の超高周波と言いますと、ずっと前のブログの記事にあった
    「サヌカイト」を叩いて鳴らせば、きっと健康に良い超高周波が響きそうですね。
    そのような超高周波は、皮膚から直接体に取り入れていると言いますか、鼓膜を通さず
    骨伝導で脳に伝わって音として聴いている、ということがわかってきたそうです。
    オーディオに詳しい人が「(生演奏が一番ですが)CDよりレコードの方が音がいい」
    と言うのは、医学が明らかにする前から、CDがカットしている超高周波を
    経験的に知っていたからではないでしょうか。
    超高周波が耳に聞こえなくても、バッハのチェンバロ曲の演奏を聴けば、きっと
    脳波がアルファ波に満たされるかもしれません(笑)

    1. 八百板 正己 より:

      ずっと前のブログを覚えていてくださって嬉しいです!
      サヌカイトもそうですが、ああいう金属的な音が世界各地の宗教に取り入れられているのも、きっと超高周波の効果を経験的に知っていたからなんでしょうね。

  2. T.S より:

    興味深いお話ありがとうございます。
    私も自宅のチェンバロで以前から楽譜1枚で音が変わる事は感じていました。できるだけ暗譜できた曲は、譜面台も外して弾く事にしています。奏者には1番良い方法だと思います。以前名手さんは、楽譜台をチェンバロの横に置いて弾かれているのを見ました。奏者には、少し離れた所では聞こえない色々な雑音、チェンバロのクイルが弦に当たる時の音、タングが戻る時の音、のような聞き手には聞こえない音も聞こえています。家の猫はチェンバロの音が好きで弾いているとおとなしくチェンバロのそばにいる事が多いですね。聴覚の発達した動物には全然違う響きを聞いているかもしれません。
    興味はつきませんね。

    1. Y.M. より:

      八百板さんの返信の前にコメントするのも何ですが、
      犬や猫は、人間に聴き取れない超音波を聴き取れるそうです。
      ですから、T.Sさんの飼い猫は、T.Sさんとは全然違う響きを聞いているかもしれません。

    2. 八百板 正己 より:

      コメントありがとうございます。
      チェンバロをお持ちなのですね!そして譜面台を外してお弾きになることも。
      猫がチェンバロの音が好き、とのことですが、研究によると人間に超高周波を浴びせる実験でも「音源に近づきたい」と感じる人が多いのだそうです。

  3. K.K より:

    こんにちは。
    いつもブログやメールを拝見させていただいています。
    私はパイプオルガンが好きでローランドのC-330というクラシックオルガンでよく弾いているのですが、チェンバロの音も好きなのでバッハの平均律やインベンションとシンフォニアもよく弾きます。
    チェンバロの音に癒される感があるのはそういうことだったのかもしれませんね。
    クラシックオルガンでチェンバロ曲を弾いても、その超高周波は含まれていないのでしょうけども、何らかの癒し効果はあるような気がします。

    1. 八百板 正己 より:

      コメントありがとうございます。
      超高周波の有無とはまた別に、美しい音色や美しい音楽は聴く人の心を穏やかにしてくれますね。
      私はコロナ前まで定期的におこなっていたコンサートで、バッハのインヴェンションやシンフォニアをパイプオルガンでよく弾いていました。バッハのこの種の音楽は楽器の制約を越えて発想されているものも多いので、いろいろな楽器での演奏の可能性が広がります。

  4. 星野裕子 より:

    ヴァイオリンなどの弦楽器は、実音とオーディオや放送を通した音がかなり違いますが、チェンバロも、高音域の独特の煌びやさや低音域の意外にズンズン来る音など、実音に接してみないと実感出来ないものがありますよね。
    健康のためにチェンバロの音がどれくらい役立つか、、世の中の皆さんに実感してもらう機会を増やす為にも、先生のリアルでの演奏会を、コロナ以前のように増やしてみたらどうでしょう(私が言うのも、大変僭越ですが、、)
    先生の生演奏が聴けるのを、首を長くして待っておられる方々も(私もそうですが)沢山おられると思います。

    1. 八百板 正己 より:

      嬉しいお言葉、ありがとうございます!
      リアルでの演奏会、いろいろ解決すべきことがたくさんありますが、来年の検討課題とさせてください。

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