県外のお客様をチェンバロ工房にご案内(写真付き)

なかなか見られない光景でしょ? 壁一面にたくさんの木工工具、床には削ったばかりのカンナ屑、作業台の上に広げられた何枚もの図面。

ここは新潟県三条市にあるチェンバロ工房です。そうなんです。同じ市内にプロのチェンバロ演奏家とプロのチェンバロ製作家が住んでいるんです。

先日「バッハの美しい弾き方講座」の会員さんが東京から訪ねてきました。講座のビデオでバッハを勉強するうちに、ピアノではなく、チェンバロやクラヴィコードといったバッハの時代の楽器が欲しくなったとおっしゃるんです。東京でもチェンバロとクラヴィコードをそれぞれ1台ずつ見学したそうなのですが、専門家にもっといろいろな話を聞きたいとおっしゃるので、今回こちらにご案内した次第です。

この日、お客様にはまず新潟県見附市にある私のチェンバロスタジオを見ていただきました。一応レッスンということで2時間お取りしていたのですが、チェンバロをじっくり観察したり、微妙なタッチや残響豊かな音を直接ご自分の手と耳で確かめたり、たくさんの質問にお答えしているうちに、あっという間に2時間経ってしまいました。

その後、チェンバロスタジオから車で1時間弱かかるチェンバロ工房まで、私の車が先導してお連れしました。工房があるのは三条市でもずーっと山の方に入っていった山里です。東京では見られない田園風景がどこもかしこも美しく、お客様は道中ずっと見とれていたそうです。

工房に着いて、さっそく作業場に案内されました。この工房では、製作する楽器一台ごとに新しく図面を書き直しての一品生産が可能なのが特長です。過去に製作したたくさんの図面が広げられて、「この楽器のこういう特性を生かしながら、こちらの楽器の広い音域と弾きやすさを備えた楽器を作るとすると、楽器の寸法はこのくらいになります。」というような話が延々と続きました。写真はそのときの一場面です。

世界に一つだけの自分の楽器を設計して作ってもらえるなんて、幸せですよね。私も自分だけの特製のクラヴィコードが欲しくなってきました。

 

追伸:
できたばかりのビデオをご紹介します。いつもご覧頂いているこの私の楽器も、装飾についてはいろいろ相談して世界に一つだけの楽器にしてもらったんですよ。

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県外のお客様をチェンバロ工房にご案内(写真付き)” に対して4件のコメントがあります。

  1. Y.M. より:

    何でも大量生産され、アコースティック楽器も工業製品化した物が幅を利かせる社会で、
    楽器演奏者が楽器製作者に「こういう楽器が欲しい」と希望を伝えて、
    世界に一台しかない楽器を一から作ってもらえるのは、素晴らしいことだと思います。
    いつか八百板さんが世界に一台しかないクラヴィコードを手に入れて、
    クラヴィコードのための音楽を、このサイトのビデオで拝聴できることを願っています。

  2. 星野裕子 より:

    三条にも、チェンバロ製作者の方がおられたのですね。さすが「ものづくりの伝統のある街」です。
    こちらの製作者さんが作られた、イタリア式チェンバロを使って居られる鍵盤楽器奏者さんのブログで、演奏動画も拝見しましたが、(特に低音域など)全体的にしっかりした音だなぁ、と思いました。塗装や装飾はほとんどされていませんでしたが、質実剛健、という言葉が思い浮かびました。

    1. 八百板 正己 より:

      彼の出身は三条の隣の加茂だそうです。加茂は日本の桐箪笥のほとんどを生産する産地で、昔から木工の技術の高さで知られています。そんなことも関係しているのかもしれませんね。

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