もしかして県内初演?(写真付き)

作曲家の名前すらほとんど知られていない超マイナーな曲です(フィッシャー作曲:待降節のためのリチェルカーレ「めでたし マリアよ」)。マイナーなだけでなく、特にどこが目を引くということもない控えめな性格だし、たった2分間で終わってしまうし、普通のコンサートにはどうしても馴染みにくい曲です。「いつかオルガンで弾きたい」と20年以上も思い続けていた願いがようやくかないます。

本番はオルガンですが、家ではひたすらチェンバロで練習です。初見でも弾けてしまう易しい曲だからこそ、細かいところの魅力を素通りしないように部分ごとに区切って繰り返し体に覚えこませていきます。写真の青い付箋は「強制繰り返し記号」。つい先のほうまで続けて弾きたくなるのを防いでくれます。

明日のコンサートは長時間で盛りだくさん。この中のキャンドルサービスのBGMとして選んだのがこの曲です。バッハのようにあまりに緻密で濃い曲ではないほうが適していると思って。

17:30~「ウェルカム・ドリンクと祈りの歌」
18:00~「キャンドルサービスとオルガン音楽」
18:20~「ディナータイムのチェンバロBGM」
19:15~21:00「フルート、ソプラノ、チェンバロによる心温まるバロック音楽」

小さいながらも本物のパイプに風を送って音を出すちゃんとしたパイプオルガンを備えたこの会場でのクリスマスコンサート。初回が2000年12月でしたから、もう18年も続いています。今久しぶりに当時の選曲を見てみたら、それだけでも自分の成長を感じます。

やっぱり「コンサート」となると、演奏するどの曲も「どうです? すごい曲でしょう?」と言いたくなるような曲を選んでしまうものです。その結果、こちらが張り切れば張り切るほど重たいコンサートになっていきます。昔のお客様には「もう当分聴かなくていいよ」と思わせてしまっていたかもしれません。

数年前から、「せっかくお食事つきなのだから普通のコンサートよりずっと盛りだくさんにしよう」と、お食事前のウェルカム・コンサートに始まるこのスタイルにしました。演奏家の性でつい演奏ばかりを詰め込みたくなるのを我慢して、重くて重くてどうしようもない企画にならないように工夫しました。お客様のご来場からお帰りまでの間、いろいろなシーンごとに、なるべく違った音楽とのかかわり方をお楽しみいただくのです。

集中して真剣に聴くのを好む方もいらっしゃるでしょうし、お食事中にBGMとして聞こえてくるのを好む方もいらっしゃるでしょう。 3時間半の間に、他のコンサートでは味わえない豊かな気持ちをどこかで感じていただけることを願っています。

300年前にこの曲が作られた当時だって、音楽はいろいろな場での実用的な目的があって作られたのですし、そもそも演奏だけを聴く「コンサート」という場は無かったのです。それを「途中休憩込みで2時間以内」という現代の標準的なクラシック音楽のコンサートの枠だけに押し込めようとするから、すてきな曲なのに演奏されないとか、クラシック音楽自体が敬遠されるとか、いろんな無理が生じるのだと思います。

一度歴史から姿を消したチェンバロとバロック音楽が復活したのですから、その受け取り方だって普通のクラシック音楽のコンサートと違う姿を模索していいですよね。単に古い音楽を演奏するだけでなく、音楽の受容という文化を問い直したいです。

 

追伸:

コンサートの詳細はこちらをご覧ください。まだいくつか席を増やせるようです。ディナーの準備がありますので、お早めに会場にご予約のお電話をお願いいたします。

ご予約、お問い合わせ:カーブドッチ・ワイナリー(Tel. 0256-77-2288)

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