これ以上速く弾けない・・・(ビデオ付き)
本当はもっと速く弾く曲だと思うのですが、私には弾けないんです・・・。
私がバッハのメヌエットを解説するとき、いつもこう言います。
「バッハの時代のメヌエットはもっと速いです。古典派とは違います。」
ところがこのメヌエット、バッハのフランス組曲第1番の第1メヌエットは困りました。バッハの後期の弟子たちが残した楽譜に大量の装飾音が追加されていて、それを弾こうとするとテンポを上げられないのです。
世の中で普通に聴かれる演奏では、こんなにたくさんの装飾音は全部省略されています。なので、私も知らん顔して無視すれば何の問題もなく弾けはするんですよ。
でも、バッハの指示を都合よく無視するなんて、私にとっては魂を売るようなもの。できません。
さんざん試行錯誤して迷った結果、今回はいつもより遅いメヌエットになりました。いつも自分が解説しているテンポと違うじゃないか、と思いつつ。
この曲は装飾音の問題だけでなく、メヌエットとしては異例の厳格な転回対位法で作られていることも見逃せません。組曲を構成する舞曲の中でも、メヌエットは当時最も流行していた人気の舞曲です。思わず踊り出したくなるような軽やかな曲に仕上げるものでした。厳格な転回対位法を持ち込んだメヌエットなんて、見たことがありません。
もしかしたら、バッハ自身があえてそういう特殊なメヌエットを作ろうと思ったことで、テンポの設定にまで影響を及ぼしたのかもしれません。
と理屈をこねてみたものの、自分の中で消化し切れないまま収録してしまったような気もします。まあ、そういうことも全部含めて今の私のありのままが現れているということです。
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私は個人的にこのテンポ、装飾音が優雅に響いて好きです♪
嬉しいコメントをありがとうございます!
手許にあるCD(装飾音の少ない演奏)は、もっと速いテンポで演奏していますが、
八百板さんの演奏は、遅すぎる、とは感じられませんでした。
息子たちや弟子たちのレッスンのために作曲した曲なのですから、息子たちや弟子たちが
誰一人としてバッハが意図した通りのテンポで演奏できないような、
そんな「速いメヌエット」のテンポを意図しないで作曲したのではないでしょうか。
少なくとも、指を速く動かす練習のために作曲したのではないと思います。
コメントありがとうございます。
バッハについて、深く研究するほど分からないことが出てくるという、奥の深さを感じます。
私はこの演奏、好きだなあと思いました。体内時計に逆らうこともなく‥。
そうおっしゃっていただけると救われます。