おっと、上鍵盤が動きにくい!(写真付き)
おっと、上鍵盤のキーが動きにくい! 繊細な曲だから繊細な上鍵盤で弾こうとするのに、これじゃ全然繊細に弾けない!
チェンバロを手に入れた当初は、こんなことが起こるたびに頭を抱えていましたっけ。でも今は大丈夫。大抵の症状は原因が分かっています。
ピアノに比べるとチェンバロの鍵盤はとても少ない部品でできていてシンプルです。そのぶん、デリケートな動きがそのまま音に直結するので、動きがスムーズになるように自分でよく手入れをする事が必要です。
特に冬場にキーが動きにくくなる原因の一つは、ガイドピンの錆です。チェンバロスタジオの中は、日中は暖房で暖かくても夜中にはかなり冷え込みます。一日の中での室温の変化が大きくなって、夜の間に湿度が上がって金属が錆びやすくなるんだと思います。
動きにくくなる、といっても、何となく雑に弾いたのでは気が付かない程度の微妙なことなんですけどね。でも、完全に脱力して最低限の指の動きだけで弾こうとするとキーがひっかかって音が出ない、というのはけっこうなストレスです。それに、楽器がそういう状態のときは音もよくないです。何というか、かすれたような雑音混じりの音がします。
さて、写真は上鍵盤を楽器から取り出して、キーを一本ずつ外しているところです。手前にずらっと並んでいるのがガイドピンです。
このガイドピンを、綿棒にオリーブオイルを付けてこすります。10本くらいこすると、もう綿棒が錆で黒っぽくなります。錆といっても、見ただけでは分かりません。でも綿棒でこすったときに、見ただけでは分からないほどわずかな錆のせいでほんの少しざらついた感触がするんです。そのざらついた感触がなくなるまでこすります。
全部のピンをこすり終わって、このまま試しにキーを動かしてみます。すると、さっきまではガイドピンの摩擦でキーキー音がしていたのが、ほとんど音がしないでスムーズに動くのが分かります。これで問題解決!
鍵盤を元に戻して、上鍵盤を弾いてみます。ああ、なんてスムーズに弾けるんでしょう! ストレスなくキーが動くって幸せ! それに音もきれい。やっぱりチェンバロの鍵盤はこうでなくちゃ。
どんな専門分野でもそうだと思うんですが、道具のコンディションって大事ですよね。動くべきところがちゃんと動く、出るべき音がちゃんと出る、それでこそ演奏に集中できます。楽器の不具合を庇いながらでは、まともな演奏はできないんです。
あなたのコメントをお待ちいたします
下のほうのコメント欄で、あなたのお考えをお聞かせくださると嬉しいです。
(システムの都合により、いただいたコメントがサイトに表示されるまでに最長1日程度お時間を頂戴する場合があります。あらかじめご承知くださいませ。)
おはようございます。
直前の、カラスの羽の記事でもそうでしたが、自分の手で楽器を手入れし、調整することができるのは、木でできたアコースティック楽器ならではだと思います。
チェンバロが発明されたヨーロッパは、冬の湿度は新潟県より低かったのかもしれません。だから冬に結露してチェンバロの弦が錆びる(もしかするとオルガンのパイプも)ことは、それほど深刻な問題ではなかったのかもしれません。それにヨーロッパの気候は、東アジアに比べて、夏と冬の温度差も少ないですし。
そうですね。関東でずっと使われていたチェンバロを雪国に持ってくると不具合が起きたりします。