鍵盤の錆取り(写真付き)

2年前の同じころにも同じような投稿をしましたが、毎年恒例の作業になっています。

冬になると、チェンバロスタジオの室温が一日の中で大きく変化します。おそらくそれが原因で、チェンバロの金属部分に錆が発生しやすくなるんです。

写真は上鍵盤を楽器から取り出して、キーを一本ずつ外しているところです。手前にずらっと並んでいるピンが錆で滑りにくくなって、ただでさえ繊細なタッチで弾きにくい上鍵盤がとっても弾きにくくなっていました。

キーを全部外したら、綿棒にオリーブオイルをつけて、このピンを一本一本磨いていきます。錆といっても、見ただけでは分かりません。綿棒でこすったときに、見ただけでは分からないほどわずかな錆のせいでほんの少しざらついた感触がするんです。そのざらついた感触がなくなるまでこすります。

ピンを磨き終わったら、キーを元に戻します。戻す時の感触からして、外す時とは全然違います。抵抗が無いんです。これは期待できるぞ、とワクワクしますよ。

鍵盤を楽器にセットして、上鍵盤を弾いてみました。なんてスムーズなんでしょう! チェンバロの鍵盤はこうでなくちゃ!

 

どんな専門分野でもそうだと思うんですが、道具のコンディションって大事ですよね。動くべきところがちゃんと動く、出るべき音がちゃんと出る、それでこそ演奏に集中できます。楽器の不具合を庇いながらでは、まともな演奏はできないんです。

同じように、体のコンディションも大事だな、と感じる年齢になってきました。なので、この新年からは自分の中の優先順位を一部入れ替えて、仕事が少々遅れてでも健康のための時間投資を怠らないように決めました。

さらに言うなら、特に芸術に携わるなら、心のコンディションも大事ですよね。いつも前向きでいるには、いつもプラス思考でいるには、どうしたらいいでしょう? これはすぐには答が出て来ないので、時間をかけて見出していきます。

 

さて、キーがスムーズに動くようになったばかりのチェンバロで、こんな演奏ができました。どうぞお聴き下さい。

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鍵盤の錆取り(写真付き)” に対して6件のコメントがあります。

  1. jtx より:

    楽しく拝見しています。鍵盤が軽く動くのはいいですよね。
    自分の楽器はもうこのメンテはやらないのですが、
    ある楽器の技術者からは、オリーブオイルは、埃を寄せるので使わないように言われました。センターピンとエンドピンの調整は、キョンの皮で磨くように指導されました。
    千葉で大量に発生している害獣の舐めし皮が良いとの事で鍵盤の磨き等にも使っています。
    色々な流儀がありますね。

    1. 八百板 正己 より:

      コメントありがとうございます。チェンバロをお持ちなのですね?

      私はピンを鹿皮で磨くように言われました。鹿皮は車用品店でボディ磨き用に売っています。
      ただ、それだとしょっちゅう磨き直さないといけなくて、ある時からオイルを使い始めました。

  2. 今井 康晴 より:

    1音1音がくっきり鮮やかに聞こえました。道具の手入れは大切ですね。
    サビは、寒暖差による結露によって生じるのでしょうか?

    1. 八百板 正己 より:

      ありがとうございます。
      おっしゃるとおり、結露によると思われます。

  3. Y.M. より:

    演奏する人が自分で手入れして、コンディションを良くすることができるのは、木でできた楽器ならではですね。電子楽器は、そうはいかないでしょう。
    「弘法筆を選ばず」と言いますが、本当は弘法大師こそ、使う筆の手入れに余念がなかったのではないでしょうか。上手な人ほど、道具の手入れを怠らないように心掛けていると思います。
    楽器のコンディションがいくら良くても、美しい音楽を演奏するためには、やはり、演奏する人の体と心のコンディションが良いことが、最も大切なことだと思います。

    1. 八百板 正己 より:

      コメントありがとうございます。
      金管楽器の手入れもプロは自分でするみたいですね。電子楽器はもちろん無理です。

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