楽譜より演奏が先(ビデオ付き)
あなたは「ブクステフーデ」という作曲家をご存じですか?
バッハが若い頃に彼の演奏を聴くために徒歩で大旅行をした、というエピソードが残っています。そう、バッハとブクステフーデは会っているのです。
先日、ブクステフーデの作品を初めてビデオ収録しました。組曲ホ短調から、冒頭のアルマンドです。
バッハのアルマンドに比べて、音符はかなり易しいと思います。私が初めてこの曲を弾いたのは、たしか高校生くらいの時でした。ほぼ初見で弾けてしまうので、「なんだ、バッハよりずっと簡単だ」と思った記憶があります。
ところが、その頃の私はこの曲を弾いても全然納得できませんでした。
「なんだか不自然だなあ。ちゃんと楽譜どおりに弾いているのに、全然音楽にならないなあ・・・」
と困り果てたものでした。
音楽が昔にさかのぼるほど、楽譜をそのまま弾いても音楽にならないのです。
音楽が昔にさかのぼるほど、音楽はまず演奏が先にあったのです。
そうやって出来上がった音楽を、制約だらけの記譜法でどうにかメモしたものが楽譜なのです。
ですから、楽譜を前にして
「この楽譜をどう料理したらそれらしくなるか?」
というアプローチでは限界があります。
そうではなく、
「作曲家は楽譜には表せないこんな事を表したかったのではないか?」
と大胆に試行錯誤する中から作曲家の真意を探っていくことになります。
結果として、メトロノームどおりの演奏からは大きく外れることが多くなります。それでも、聴いた人がとても自然に感じられるなら、作曲家の真意に近付くことができたと言えるでしょう。聴いた人がとても不自然に感じるなら、作曲家の真意を大いに誤解した証拠と言えるでしょう。
ではお聴き下さい。
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「アルマンド」という題名を伏せて、八百板さんの演奏を初めて聴いた時、
この曲の題名は「プレリュード」か「ファンタジア」か、と思いました。
これをメトロノーム通りのテンポで、楽譜通りに演奏したら、きっと
味気ない演奏になると思います。
ありがとうございます。
なかなか鋭いご指摘ですね。じつは組曲の冒頭のアルマンドは、組曲の開始を告げるプレリュードとしての役割を兼ねているんです。それで即興的なアルマンドが多いというわけです。
バッハの、チェンバロのための組曲(それに類する曲)だと、
イギリス組曲・パルティータ・フランス風序曲には、プレリュードに相当する曲がありますが
フランス組曲にはプレリュードがありませんね。
ブクステフーデの時代には、組曲はプレリュードがなくてアルマンドで始まるのが普通で、
それでアルマンドにプレリュードの役割を兼ねさせていたのでしょうか。
はい、そういうふうに理解しておいて大丈夫でしょう。
>音楽が昔にさかのぼるほど、楽譜をそのまま弾いても音楽にならないのです。
>音楽が昔にさかのぼるほど、音楽はまず演奏が先にあったのです。
>そうやって出来上がった音楽を、制約だらけの記譜法でどうにかメモしたものが楽譜なのです。
ヨーロッパのクラシック音楽では、古典派くらいで五線記譜法が確立したと思いますが、
和楽器や民族音楽は、今でも五線譜を使わないことが多いですね。
そして西洋でも時代を経て現代音楽になると、従来の五線譜に書けなくなって、記号やら図形やら
作曲家ごとに独自の(勝手な)記譜法を作り始めているようです。
ヨーロッパでも、ルネサンス・ポリフォニーに適した記譜法や、グレゴリオ聖歌に適した記譜法がそれぞれの時代に確立していました。現代の記譜法では表現できないことをちゃんと表現できていたのですが、音楽様式の変化とともに記譜法も変わっていきました。
素敵な旋律ですね。
ずっと聴いていたい旋律です。
アップしてくださり、ありがとうございます😊
コメントありがとうございます。
こういうマイナーな曲を「素敵な旋律」と言っていただくと、とてもうれしいです。
これからもいろいろな作曲家のマイナーな曲をアップしていきますね。
先生の弾いていらっしゃるチェンバロが、いつものと違って、音も少し渋め?な感じがしました。ブクステフーデの曲に合わせたのでしょうか。
音の違いを分かってくださって嬉しいです!
このチェンバロはこれからもバッハより前の時代の曲に使う予定です。
いつかベームの曲もこのチェンバロで弾いてください! 楽しみにしております。
はい、そのつもりで計画しています!