できるのに、あえてやらない(ビデオ付き)

私が「できる」のではありません。私が「やらない」のでもありませんよ。

 

あなたは「テレマン」という作曲家をご存じですか? バッハとほぼ同じ時代に同じドイツで活躍した作曲家です。

テレマンはバッハとも親交があって、お互いの音楽を高く評価していました。ですが作風は全く違います。テレマンはあきらかに大衆に受けることを狙っていました。そして、その狙い通りに大衆に大受けして、生前はバッハをはるかにしのぐ偉大な作曲家として、抜群の評価と人気を誇りました。

バッハはもちろん偉大です。今では「バロック時代の最も偉大な作曲家は?」と問われれば、間違いなく「バッハ」という答が返ってきます。が、バッハの偉大さに心を奪われるあまり「テレマンなんかバッハと違って退屈だ」などと言う人がいるのはちょっと残念です。バッハに比べて対位法は貧弱だし、和声だって当たり前だし、構成も凝っていないし、というわけです。

誤解しないでいただきたいのですが、テレマンが決して手を抜いていたわけではないという事です。高度な対位法を使いこなす技術も持っていたのに、それをあえて前面に押し出さなかったのです。多くの聴き手に理解してもらうために、手段と目的をきちんと使い分けたんですね。

バッハだって、「農民カンタータ」のような曲を作るときには、わざと対位法を貧弱にしたり、野暮な旋律を使ったりして、聞き手の笑いを誘っていますよ。

バッハとテレマンのようにスタイルが違う作曲家を比べる時、「どちらが優れていて、どちらが劣っているか」ではなくて、「それぞれに良さがある」と考えたいですね。だって、本人どうしがお互いの音楽を高く評価していたのですから。

 

つい先日、はじめてテレマンの曲を収録しました。この曲も、さりげない所で対位法がうまく使われています。それに、劇的な効果を出すために思い切って単純化した所などは、じつに効果的です。もう「テレマンなんかバッハと違って退屈だ」なんて言わせませんよ。

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できるのに、あえてやらない(ビデオ付き)” に対して6件のコメントがあります。

  1. aoki より:

    ヘンデルもそうですよね、やさしいのに効果があがるから、絶対に人気がでるとおもいます。
    逆によくもバッハを後世の大音楽家(モーツァルト、メンデルスゾーン、ショパンあたりはまちがいがない、そこから先のロマン派だとどうなのだろう?)は、あれだけ情報伝達が限られていただろう中で、きちんと拾っているなと、そこに感動します。

    1. 八百板 正己 より:

      まさにそうですね、ヘンデルもそうですね。「メサイア」の最終曲「アーメン」の対位法が書ける人なのに、ふだんはフーガでもとても聴きやすく処理していますね。

      後世の大音楽家たちですが、音楽の専門家たちの間ではバッハのことはじゅうぶんに伝わっていたらしいですよ。一般の人は見向きもしなかったようですけれど。

  2. Y.M. より:

    冒頭と末尾の両手オクターブは、まさに「劇的な効果を出すために思い切って単純化した所」ですね。
    中間部で上鍵盤を使って音量と音色を変えているところも、巧みだと思いました。
    それにしても、ドイツにテレマン(1681~1767)、バッハ(1685~1750)、ヘンデル(1685~1759)が生まれて活躍した時代に、フランスにラモー(1683~1764)、イタリアにドメニコ・スカルラッティ(1685~1757)と、ヨーロッパ各国に鍵盤音楽の天才が生まれたのは、それぞれが良い影響を与え合って競い合い、バロック音楽の掉尾を飾らせた、音楽の神の摂理かとまで思います。

    1. 八百板 正己 より:

      おっしゃるとおり、バロック後期の鍵盤音楽の充実ぶりはすごいですね。
      でも、じつは同じくらいバロック中期にもバロック初期にもルネサンス時代にも、同じことが起こっているんですよ。

  3. 星野裕子 より:

    バッハとはまた違った、劇的な表情の曲ですね。中間の、先生が2段鍵盤を駆使して弾かれた所は、オペラでいえば、一旦オケの伴奏が静まった所に、歌手が切々と装飾も交えながら歌っているような。
    テレマンの曲は、最近新潟市で、チェンバロとオーボエのデュオで聴きました。一般の音楽愛好家向けの曲も多く書いたとのこと。全部で4000曲余りも書いたそうですが、掘れば面白い曲がどんどん出て来そうな、宝の山のようですね。

    1. 八百板 正己 より:

      オペラとの関連に気付いてくださるとは嬉しいです!
      多作家テレマンの全貌は専門家でもいまだに良く分かっていないそうです。
      チェンバロ独奏曲は多くないんですけどね。

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