もっと飾る!(ビデオ付き)

バッハ自身が後になって装飾音をたくさん追加した曲ですけれど、繰り返しのときに私はもっともっと装飾音を追加しました。

みんながやっていない演奏を公にするのは勇気が要りますよね。でも、バッハの時代にはそのように演奏者の責任で装飾音を追加する習慣があった、と知ってしまった以上、やらないわけにはいきません。だって、いつかはそれが世界の常識になるからです。

昔のピアノの巨匠たちの演奏には、決してこんな装飾は出てきませんよ。それは、20世紀の半ばくらいまで、バッハは楽譜どおりに弾くものだと誰もが信じて疑わなかったからなのです。いくら巨匠でも、知らないものは弾きようがないですよね。それは巨匠たちの責任ではありません。

一度歴史から姿を消したチェンバロが復興して半世紀以上。その間、音楽学者たちは精力的にバロック時代の演奏習慣について研究してきました。この一見簡素な楽譜から、当時はどんなに豊かな演奏がされていたのか、今でもその研究は進みつつあります。

私自身も年齢と経験を重ねることによって、装飾音への感受性も変わります。

そうしたさまざまなことが重なって、今の私の演奏があります。

収録したばかりの、バッハのフランス組曲第5番からサラバンドをお聴きください。繰り返しの1回目はバッハの晩年の弟子たちの楽譜(バッハ先生によるレッスンを反映していると考えられています)にあるとおりに弾きました。繰り返しの2回目の装飾音はすべて私の責任です。

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  1. 後藤 より:

    八百板様、初めましてこんにちは。

    冒頭に戻る時の上昇音(?)が特に格好いいと思いました(^^)
    ※ピアニストのリパッティもパルティータで同じようなやり方をしていたような気がします。

    装飾音にはリズム的にかなり繊細な感覚が必要なのだと思いますが、何回も聴いているとここまで自由でもいいのか…!と思えてきて気持ちが軽くなりました。ありがとうございます✨

    1. 八百板 正己 より:

      コメントありがとうございます。
      私の演奏も受け入れていただいて嬉しいです。

      装飾音の自由、そう、自由ですね。
      私は、ひととおり楽譜どおりの練習が終わってからが楽しみです。
      楽譜にない装飾音やテンポ・ルバートなどをあれこれと試しながら、だんだん演奏が定まっていく課程がとても楽しいのです。
      ちょっとやりすぎぐらいにやってみて、「これだとどうして良くないのか?」と考えて削っていく方法もいいですよ。

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