3声の曲の練習法

私の本「超効率バッハ練習法」をお買い上げ下さったお客様からメールをいただきました。

バッハに限らず3声の曲を弾く場合、内声は右手と左手の間を行ったり来たりします。こういう場合、指は動いていても、内声がちゃんと一つの声部として響いているのか、なかなか聴き取れません。左右のどちらかの手で弾く2声の和音の固まりが移動しているようにしか聴こえないのです。

このお客様は向上心をお持ちで素晴らしいですね! 複雑なバッハの曲は、とりあえず指が楽譜どおりに動くようにするだけでも大変で、そこで満足してしまう人も多いのに。私の本でも、そこまで踏み込んでは説明していませんでした。

そこで、このお客様に返信したメールの内容をここで皆さんにも共有します。細かくステップを分けすぎてしつこいと感じるかもしれませんね。でも、慣れないうちはこのくらい丁寧にやってみて損はありません。

 

0.
私はこれは聴覚の良し悪しとは直接関係がないと考えています。楽器を弾かずに楽譜を見ただけで、頭の中で3声がきちんと鳴るかという問題に帰着するからです。内声が聞こえるようになるには内声を大好きになることが大切です。

1.
問題の曲の、問題の小節を取り出します。旋律として大好きになるために、数小節の長さになってもいいでしょう。

2.
その部分の内声を、右手だけで、つまり3声で弾くときとは違う指使いで十分に弾き込みます。

3.
そこに、歌詞として「ドレミ」を付けた声を重ねます。歌いやすいように、適宜オクターブ下げたりしていいです。

4.
自分の声と、右手で弾いている内声の音が、ちゃんとユニゾンかオクターブになっているか確認しましょう。よく聞こえないうちはまだ練習が足りなくて余裕がないという事です。じゅうぶんに弾き込み、歌いこんでください。

5.
左手でバスを、右手で内声を弾く「2声曲」として弾き込みます。

6.
そこの右手にまた「ドレミ」付きの声を重ねます。4.の注意をここでもチェックして下さい。

7.
次第に歌う声を小さくしていきます。それでも声と「ドレミ」の言葉が聞こえますか?

8.
ついに声を出すのをやめて、口を「ドレミ」の形に動かすだけにします。頭の中に「ドレミ」の言葉が脳内発声されて聞こえますか?

9.
今度はソプラノも含めた3声を弾きながら、内声を歌で重ねます。

以下同様にして、最終的には3声を弾きながら、内声のドレミの言葉が脳内発声で聞こえるようになるまで弾き込みます。ここまで来れば、かなり内声は聞こえていることでしょう。

どうして声を出すのか分かりますか? 鍵盤楽器は指先が機械的に動くだけで音が出せてしまいますが、歌は自分の中に旋律がしっかり入っていないと歌えないからなのです。

 

いかがでしたか? この練習法は、インヴェンションなど2声の曲で左手が旋律として聞き取れない場合にも効果ありますよ。

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3声の曲の練習法” に対して4件のコメントがあります。

  1. 芹澤ヨシノリ より:

    八百板先生。
    芹澤です。
    拙の質問を取上げていただき光栄です。
    先生に比べたら、本人の向上心なんてゼロみたいなもので恐縮しています(..;)。
    その後、先生の「バッハ自身によるインヴェンションとシンフォニアの指導順序」を読み、自分の感じたことが述べられていたので、これも少し驚きました。
    拙にとっては、3声のシンフォニアは平均律の3声フーガよりも難しく、現在のピアノ教育における学習順は本当に疑問だったからです。
    2声でも例えば10番 G Dur は一般に易しい方とされていますがとんでもない、、左右のアルペジオ音型がシンメトリーと非シンメトリーとが共存し、拙には非常に弾きにくい。  
    私だけではない。この曲については国内でかなり名う手とされているキーボード奏者もその様に仰せでした。
    一言で言えば、平均律の方がクラヴィア的身体特性に沿った音型が主体なので、案外と指に馴染む。
    が、インヴェンションは2声も(ましてや)3声も、フィジカルなフィンガリングを無視した、余りに純度の高すぎる音楽的な音型で書かれていると感じられるのです。
    「でもインヴェンション(とシンフォニア)が終わらないと、平均律やっちゃダメなんだよな、ゼン○ンのグレード表はずっと上級だし。」
    ↑の思いに悩んで、何十年経ながら、(好きなので)弾きたくとも平均律に辿り着けなかったという、拙と同様の人は間違いなく沢山おられるはずです。
    先生にあらためて、バッハの鍵盤作品グレードや練習順、そして例えハードルの高い曲でも好きで弾きたければ取組んでも良いものなのか、というレクチャーがあったら良いかな、と思うのです。
    もう一点。フリーデマンやカール・エマニュエルには自分の跡を継がせるべく英才教育的な素材を用意、一般の学習者にはもっと容易なものにした可能性とかは無いでしょうか?
    なんとすれば凡人の拙にとって、息子達のテキストなど高度過ぎて当然だと思うのですが。

    1. 八百板 正己 より:

      芹澤様
      ご質問の公開を快く認めてくださってありがとうございます。

      また新たな課題をいただきました。
      ここのコメントでお答えするには内容が濃すぎるので、後日また改めてブログの題材として使わせていただきますね。

  2. 三浦みゆき より:

    八百板先生

    いつもご丁寧な配信、本当にありがとうございます。
    今回の、三声の曲の練習法ですが、正に練習法を模索しているところでありました。
    この様にご質問して下さった芹澤様にもお礼申し上げます。
    私も二声、三声のインヴェンションに対して(曲によって)同じ様に感じております。

    この度はとても参考になりました。早速練習に取り入れさせて頂きます。
    三浦

    1. 八百板 正己 より:

      三浦様

      ご丁寧にありがとうございます。
      お役に立てまして嬉しいです。

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