バッハのインヴェンション自筆譜(写真付き)
ここでご紹介するのは、バッハの「インヴェンション第10番」の自筆譜です。 ピアノを習った方なら子供のときに弾いた(弾かされた?)ことでしょう。私は中学生のときに弾きました。
この自筆譜はレッスン用に写譜させる原本としてバッハが特に丁寧に清書したものです(息子や弟子たちはバッハからこの曲を習う前に、自分用の楽譜を自分で書き写しました)。作曲するときのメモと違って、これを譜面台に置いてそのまま弾くこともできるほどですよ。ただし、右手がト音記号でなくて、第1線がドの「ソプラノ記号」なので、慣れないと弾きにくいですけれど。
では細かく見ていきましょう。
インクの濃さがまちまちですね。赤丸で囲った濃い音符は、何十年も使ってインクが薄れてきたのを、後になって見やすいようになぞったのでしょうか? 青丸で囲った非常に薄い音符は裏のページのインヴェンション第9番が透けているものです。
続きの部分を見てみましょう。ちょっと分かりにくいのですが、下の赤丸で囲った装飾音のインクの色が黒っぽいのです。いっぽう、青丸で囲った装飾音は他の音符と同じ濃さで、始めから書かれていたものです。
つまりバッハはレッスンで何十年も使ううちに後から装飾音をこんなにたくさん書き込んだというわけなのです。
この曲をご存じの方なら分かって下さると思いますが、この8分音符に装飾音が付くとなると速くは弾けません。特にピアノでの演奏で、全体にスタッカートを効かせた非常に速い録音があったりしますよね。でも、バッハ自身が8分音符に装飾音を付けたのです。この装飾音が美しく鳴るテンポとなると、わりと遅めになります。ということは、曲全体を覆う8分音符の分散和音も、スタッカートを効かせるよりはむしろスラーを付けたリュート風になるのかもしれませんよ。
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