閉館時間まで一人で居残り練習(写真つき)

いよいよ上越市のオーレンプラザにて、新潟バッハ管弦楽団&合唱団によるバッハのヨハネ受難曲の全曲公演です。

ステージリハーサルが夜の8時に終わって、私は閉館時間まで一人で居残り練習。鍵盤楽器は舞台に設置してしまうと持って帰れませんから、ここで練習するしかないのは宿命ですね。

全40曲中、人数の多い合唱曲は私は指揮者として立ち上がって手を振りますが、それ以外の曲はすべてチェンバロを弾きながらアンサンブルを統率します。自分の演奏は意識の2割から3割くらいで弾けるくらいの余裕がないと、アンサンブルを隅々まで聴きながら統率するなんてできません。これが最後の個人練習のチャンスです。2時間の大曲全体を一通り丁寧に確認しつつ、迷いが生じているところを集中して修復します。

リハーサルでは初めてのホールで互いの音が良く聞こえなくてアンサンブルがバラバラになりそうな場面がいくつも出てきました。楽器の配置を変えてみたり、ソロ歌手の立ち位置を思い切って変えてみたりしつつ、チェンバロの演奏もいつもより和音を厚く、拍をはっきり刻むようにして、頭も鋭く振って指揮棒の代わりに視覚に訴えて、集中力が切れそうな曲の始まりにはわざと怖い顔をして団員の注意を喚起して、と、あらゆる手段を駆使して2時間の長丁場を切り抜けるつもりです。

新潟バッハ管弦楽団&合唱団はプロもアマチュアも区別しない異例の団体です。この日のリハーサルでも「バラバラになりそうなところや一拍ずれて弾き始めそうな所がちゃんと揃うか?」というレベルの不安が残る曲もありました。一方で、精鋭揃いとなる少人数のアリアなどでは、すでに他の曲の完成度をはるかに超えているというのに、それでも団員それぞれが妥協なく議論しながら居残り練習で磨きをかけていました。

音楽には「これで十分」ということはありません。レベルの高い人ほど、どんなに練習を重ねてもかえって自分の課題が次から次へと明らかになって、演奏が向上するよりも理想の姿が遠ざかるほうが速いほどです。なので、本番という締め切りがあることで諦めがつくのは救いです。もし本番がなかったら、一つの曲を永遠に練習しなければならなくなるでしょう。

それでも、時間が許す限り最善を尽くして練習します。誰かから何かを言われるからでなく、ここで手を抜いたら自分で自分を裏切ることになりそうだからです。

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閉館時間まで一人で居残り練習(写真つき)” に対して4件のコメントがあります。

  1. 山下廣之 より:

    今日の演奏会、合唱団の一員として歌いましたが八百板様の指揮はわかりやすくしっかりと付いていけました。客席の感動がステ-ジ上舞台にも伝わってきた気がします。とても感動的なヨハネ受難曲になりました。有難うございました。

    1. 八百板 正己 より:

      山下さん、団の立ち上げの時に上越方面の団員をたくさん集めてくださって、この日の上越公演の礎はすべて山下さんが築いて下さいました。これからも、新潟県の音楽史に残る演奏をご一緒に積み重ねていきましょう。

  2. T.H より:

    もしかしたら先生、1キロ位痩せられたのではないでしょうか!?
    本当に真剣に演奏されたり指揮をされたり。

    オルガンもチェンバロも他の楽器より休むひまが少ないのではと思いました。

    ヨハネ受難曲の素晴らしい演奏ありがとうございました。どうぞお体大切になさってください。

    1. 八百板 正己 より:

      このたびも遠路ご来場くださりありがとうございました。

      「オルガンもチェンバロも他の楽器より休むひまが少ない」というのはその通りです。「通奏低音」の名のとおり、他のパートには休みがたくさんあっても、この楽器には基本的に休みがないのがバロック音楽です。バッハが書いたすべての曲のすべての小節に参加できる特権でもあります。

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