バッハが終わってしまった(写真付き)

不完全な省略表現でしたね。詳しくは「浅利守宏さんと一緒に演奏するバッハのフルートソナタ全曲コンサートシリーズが終わってしまった」でした。

写真は、終演直後なのに疲れも見せず凛々しい表情の浅利さん、ヘトヘトの私、そして受付助手を務めながらずっとニコニコしていた娘です。

バッハのフルートソナタを7つ全部(それと無伴奏フルート・パルティータが1つ)を集中的に演奏したのは私は初めてのことです。こうして全部並べてみると、1曲1曲がみんな違う表情を持っていて、バッハという作曲家の幅の広さをあらためて感じました。

それにしても、私がこんなに疲れた顔をしているのには理由があります。この日の最後に演奏したホ短調のソナタが、ほんとうに難しかったのです。技術的な難しさでは9月に弾いたロ短調のソナタの方が上でしたが、このホ短調は音楽の密度がすごいのです。 今回の4曲のソナタの練習時間のうち、この1曲だけで7割は費やしたでしょう。 これでもか、これでもか、と複雑な不協和音や異常な音程の跳躍がびっしりで、頭と心が付いていけなくなるんです。でもバッハが「こう弾け」というんだから頑張って付いていくしか無いですね。

今にして思えば「もっと余裕のあるスケジュールを組んで、1曲1曲に十分な練習時間を確保して、体調も万全に整えて演奏したら、もっと違った演奏ができたんだろうな」という気もします。でも、たぶんそんなことを言っていたら、バッハのフルートソナタ全曲なんて何年もかかったでしょうね。限られた時間で一気に仕上げて発表するのも能力のうち。そうやって経験を積んで、次の機会につなげながら総合力を高めていくのも許されますよね。

白状すると、そのホ短調のソナタの最後の最後に、5秒間で20回和音が変わるというすさまじい部分があるのですが、そのほとんどを豪快に弾き間違えました。「ああ、一番大事なところでひどいことをしてしまった・・・」上の写真の私の表情はその無念さのためでもあります。

でも不思議。終演後に妻に聞いても「なんかバッハじゃない和音が鳴っていたような気はするけど、平気な顔してテンポが全然ゆるまないで突進していったし、ああいう曲なのかな?って思った」と気にしていないのです。後で自分でも録音を聴いてみました。そこだけ切り取って冷静に聴くとバレるのですが、曲の始めから聴き進んで、バッハの音楽にどんどん高揚していった流れで聴くと、たしかにあまり気になりません。不思議なものですね。

そのホ短調のソナタ、自分でこういう演奏になることを予見していたわけではないのですが、来週のコンサートでもう一度浅利さんと弾くことになっています。今度こそ、自分でも納得の行く演奏をするぞ!

ホ短調のフルートソナタも聴ける、年に一度のとてもリッチなコンサートの詳細はこちらです。

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バッハが終わってしまった(写真付き)” に対して4件のコメントがあります。

  1. 小西英樹 より:

    浅利さんとは昨年7月の「巻き管フルートの夕べ」を聴かせて頂き、それ以来Facebook友達を続けさせて頂いています。浅利さんのバッハに真摯に向かう姿勢に共感し、今回、思いきって東京から新潟へコンサートを聴きに行きました。大変濃厚な時間を共有させて頂きました。自分はフルートとファゴットを吹くアマチュアですが、今後の音楽への取り組み姿勢に大きな指針を頂き、感謝しています。

    1. 八百板 正己 より:

      小西様
      遠方からのご来場、そして嬉しいコメントをどうもありがとうございます。ご満足いただけましたようで嬉しいです。
      これからもどうぞよろしくお願いいたします。

  2. 家合映子 より:

    今回の写真で見る八百板先生の表情は、”疲れ切った”というよりも、満足げな、と、何かに耐えているような、その両面を併せ持っている、そんな表情に私には見えました。とても良いお顔をされていると思います。それにしても、貴重な体験談を聞かせて頂き、励みになりました。ありがとうございました。また機会があれば、このような演奏会に行かせて頂きます。(゜))<<。

    1. 八百板 正己 より:

      よい顔ですか? ありがとうございます! そうおっしゃっていただけると嬉しいです。

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