チェンバロを見るのは初めてです
いきなりこんなタイトルで驚かせてしまったでしょうか? もちろん私のことではありません。先日、柏崎でのコンサートで、お客様から頂戴した言葉です。
東京電力主催の入場無料のコンサートで、選曲はかなり通向きでした。主催者が東京から呼んだヴァイオリン奏者とチェロ奏者によるバッハの無伴奏、私が弾くゴルトベルク変奏曲の抜粋、そして最後にヴァイオリンと通奏低音のためのバッハの作品3曲です。普通は入場無料のコンサートならもっと一般受けする曲を選ぶのでしょうけれど、ここのお客様にはそんな心配は要らないのだそうです。
150席ほどの客席がほぼ埋まる感じで多くのお客様が関心を持ってご来場くださいました。それに、こんな通向きのプログラムなのに、お客様は最後まで集中して楽しんでくださったようです。終演後、そろそろお客様はみな帰られたかな? とステージ脇から客席を覗くと、目を輝かせたお客様方が何人もスマホを手に「ステージに上がって写真を撮らせていただいてもいいですか?」と、私が来るのを待っていて下さいました。
「どうぞどうぞ。たくさん撮って下さい。」と私が促したときに頂いた言葉が、「チェンバロを見るのは初めてです。」だったのです。とても嬉しそうでした。
嬉しそうなその方の姿を見て、「チェンバロを見るのは初めてです。」の後に続く言葉をいろいろ想像してしまいました。「こんなに美しい楽器だとは知りませんでした。」「本物の生の音はとてもすてきでした。」「生まれて初めてのこんな出会いが、柏崎で入場無料で得られるなんてラッキーです。」「チェンバロという楽器やバッハの音楽が、今日の出会いで身近になりました。」
この日もまた、私は新潟県に住むチェンバロ演奏家として、代わりのきかない役割を果たすことができたんだなあ、と嬉しくなりました。東京から来たヴァイオリン奏者とチェロ奏者ももちろん素晴らしい方々でしたが、私がチェンバロを運んで演奏したからこそできたオール・バッハ・プログラムです。
バロック音楽のコンサートをするときにはいつでもどこでも、チェンバロの調達がネックになると聞いています。私がこうしてどこにでもチェンバロを運んで演奏することをもっと多くの方に知っていただきたいです。そして、もっと多くの方に「チェンバロを見るのは初めてです」とおっしゃっていただきたいです。
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インターネットで世界中の音楽演奏が無料で聴ける今だからこそ、
地元新潟県内で、チェンバロの”生演奏”を聴くことができ、
演奏者の方々や、居合わせた他のお客さんたちと心を通わせる
こともできる機会を提供なさっていることは、
八百板さんの使命(ミッション)なのですね。
ありがとうございます。
そうです、使命です。単に曲を弾くという以上の、何かもっと大きなことにつながっていると思うと、生きがいを感じます。