バッハを聴いて感動する人、退屈する人
ちょっと考えてみてください。バッハの音楽を聴いても、感動する人もいれば退屈する人もいるのはなぜでしょうか?
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(考えてくれていますか?)
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単なる好き嫌いの違いでしょうか?
私はそうは思いません。
ひとつ私の実例をお話ししましょう。
先日、私が帰宅すると、夜も遅いというのに、妻と娘がYouTubeでクラシックバレエを見て大いに盛り上がっていました。妻も娘も長年バレエ教室にかよっていたので、ダンサーの動きの一つ一つがどれほど大変なのかよく分かっています。それに、レッスンで「もっとこういうふうに!」と厳しく指導されてきたので、見る目が育っているわけです。
でも私はバレエ教室には「姿勢を正す」という目的で数年かよってみただけです。自分では何も踊れないので、同じYouTubeを見ても、どのダンサーも同じようにしか見えないんです。それに同じような動作の連続ばかりで(と私には見えたのですが)、何だか退屈です。
バッハを聴くのも同じことです。同じ演奏を聴いても感動する人と退屈する人がいる、その一番の違いは「バッハの美しさを感じ取る心と耳を持っているかどうか」にかかっているのです。そう、バッハを聴いて退屈する人には、じつはバッハの音楽の細部がほとんど聞こえていません。
この「バッハの美しさを感じ取る心と耳」は、良い演奏を聴くだけでは手に入れるのは難しいです。特にバッハ特有の入り組んだ対位法はそうです。
また私の実例をお話ししましょう。
私は小学生時代に「学校一番のリコーダーの名人」でした。耳でコピーしたヴィヴァルディの協奏曲の超絶技巧独奏パートを得意げに吹き散らかしていました。でも、仲のいい音楽好きの男友達とアンサンブルをしても、友達の音が聞こえないんです。もちろん、音が鳴っていることは分かりますが、旋律として認識できません。で、相手の旋律を意識すると、今度は自分もつられて同じ旋律を吹いてしまうんです。
私は親に買ってもらったベートーヴェンの交響曲のレコードも毎日のように聴いていました。なかなか変わり者の小学生でしょう? それでもアンサンブルの相手の音が聞こえない現象はずっと続きました。
要するに、当時の私の頭の中には同時に2つの旋律が鳴らなかったのです。
この欠点は私がピアノを習い始めた時(小6の春)から、少しずつ改善されていきました。そして、独奏パートの派手さや美しさで際立っているわけではないバッハの良さも、だんだんと分かるようになっていきました。
つまりこういうことです。
バッハの音楽の美しさをもっともっと味わいたかったら、あなたもバッハを練習しましょう!
テンポは遅くてもいいんです。間違えてもいいんです。正確に弾けなくてもいいんです。バッハの音楽の本当の美しさを感じ取る能力は、自分で弾くことによってしか伸ばせない部分があるのですから。
楽器を練習するのは、曲が弾けるようになるためだけではありません。心と耳が育ちます。
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下記の語りは私にぴったり当てはまります。『バッハの音楽の美しさをもっともっと味わいたかったら、あなたもバッハを練習しましょう! テンポは遅くてもいいんです。間違えてもいいんです。正確に弾けなくてもいいんです。』
本件とは直接関係ないのですが、効率的なバッハの弾き方ビデオのベータ版を少しずつ拝見しています。朗読と実演がとても刺激になり、練習のエネルギーをいただいています。
ただ、初級者の老人には、ビデオ中の【驚くほどゆっくりのテンポ】がとても速く感じられます。
今、シンフォニアの14番を始めましたが、、私の場合は、十六分音符が44から両手をスタートします。
四分音符や八分音符ではメトロノームの下限目盛が足りません。
他の方が聞いたら、それこそびっくりだとおもいますが、冒頭のブログの一節によれば、演奏家としては不適格でも、バッハを愛する者としては許されると感じて、少し安心しました。
コメントありがとうございます。
ビデオ教材のご感想もどうもありがとうございます。
シンフォニア14番は特に弾きにくいですから、遅すぎるという事はありませんよ。
はじめまして
失礼いたします。先生のこのサイトを知り間もないのですが、あまりの衝撃で思わず書かせていただいています。
もっと早く知りたかった!これから毎日楽しませていただこうと思います。ありがとうございます!
私は、バッハが大好きでたまらないのです!
チェンバロを初めてから数年ですが、心身ともにすごく元気でいられるはきっとチェンバロを毎日弾いているおかげだと思います。
今弾いている平均律1巻4番cis mool も大好きすぎてたまらないのです。先生のレッスン動画、楽しみにお待ちしています!
図々しいコメントでスミマセンm(_ _)m
嬉しいコメント、どうもありがとうございます。
チェンバロを弾いていらっしゃるのですね!
おめでとうございます!
チェンバロの音には人間の耳に聞こえない高周波成分を豊富に含んでいて、
それが免疫力を高めるんだそうですよ。録音ではダメだそうです。
平均律第1巻の嬰ハ短調、ここ1年くらいには収録できるでしょう。
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ありがとうございます!
登録させていただきました!
嬉しいです!
バッハを聴いて退屈することはありません。
私は聴くクラッシックの6~7割くらいはバッハですし、バッハの音楽を敬愛しています。
ただ、それでもバッハばかり聴いてもいられません。
バッハのプレリュードを聴いた後にすぐラフマニノフ、ショパン、チャイコフスキーが聴きたくなったり、ロックを聴いたりもします。
逆に色々聴くことで、バッハの音楽への理解が深まる思いもしています。
バッハは苦手という人の気持ちもわかります。どこが苦手なのかもなんとなく、、、
9月はピアノの2回を含め何回かコンサートに出かけます。
色々聴いてまたバッハを探求したく思います。
すばらしい心と耳をお持ちですね!
長年かけて培ったその能力は財産です。
有難うございます。
褒められるようなことでもないですが、自己満足にならぬよう精進しようと思います