弾いてない音が鳴る!(ビデオ付き)

弾いてない音が鳴るんです! バッハが巧妙に仕組んだ魔法です! その音によって、曲全体の解釈が一気に変わるんです!

この魔法に気づいたのは、今から20年くらい前だったでしょうか。真夜中に一人静かにチェンバロを練習しているときでした。

人間の聴覚は夜になると敏感になる、と感じませんか? 私はいつも、夜になるとチェンバロの音が大きく聞こえるんです。夜に聴覚が敏感になるのは、たぶん危険な捕食動物に囲まれていた石器時代を生き抜いたご先祖様たちからの遺伝でしょうね。

練習していた曲はバッハのインヴェンション第2番ハ短調。なんとも気分が晴れない曲なのです。その最後の音を弾いたとき、突然バッハが仕込んだ魔法が現れたのです!

どんな魔法が現れたのか、気になるでしょう? そのことを解説したビデオができました。どうぞご覧ください。

あなたのコメントをお待ちいたします

下のコメント欄に、ご感想、ご質問、ご意見など、何でもお寄せください。
あなたのコメントがきっかけとなって、音楽を愛する皆様の交流の場になったら素晴らしいと思うのです。
(なお、システムの都合により、いただいたコメントがサイトに表示されるまでに最長1日程度お時間を頂戴する場合があります。あらかじめご承知くださいませ。)

弾いてない音が鳴る!(ビデオ付き)” に対して2件のコメントがあります。

  1. Y.M. より:

    おはようございます。
    ビデオを拝見してから、ちょっと楽譜を調べてみたのですが、インヴェンションのうち短調の曲(第2番の他、第4,7,9,13,15番)はすべて、最後の音が主音だけなので、バッハの時代の調律法だと、それぞれの調独自のピカルディ終止の音が聞こえると思いました。
    シンフォニアになると、短調の曲のうち第2,7,9,13番は楽譜の上で明確なピカルディ終止になっていますが、第11,15番は最後の音が主音だけなので、楽譜に書いてない音が聞こえてピカルディ終止になると思います。
    シンフォニアの最後を(第15番)、楽譜に書いてないピカルディ終止になるように作曲しただけでなく、短調の主和音で終わる曲が1曲もないことは、バッハがシンフォニアを通じて
    「どんなに苦しく辛く悲しいことがあっても(バッハの時代には、ヘ短調やロ短調は、特にそのような感情を表すための調だったと思います)、最後には必ず救われる」
    ということを演奏者に伝えている、と感じました。

    1. 八百板 正己 より:

      ご丁寧にありがとうございます。
      せっかくの機会なので添削しちゃいますね!

      インヴェンションの13番の終止は右手が短3和音をアルペッジョで弾いていますよ。

      終止の音を単音で弾いたときに、長3度が実際に共鳴して鳴るのは、その3度がかなり純正に近い場合だけです。
      私のチェンバロだと、ドを弾いたときにはミが聞こえるけれど、他の音に対してはほとんど長3度の共鳴は聞こえません。
      3度の純正度合いだけかれすれば、私が通常使っている調律法では、ドミソとファラドとソシレは同じ純正度合いなのですが、ファやソを弾いても、かろうじて聞こえるかどうかという程度にしか共鳴しません。
      最低音のドに比べてファやソはだいぶ高い音なので、弦が発するエネルギーが少ないのと、共鳴する相手の弦も高い音になるので振動が小さくなるからだと考えます。

      そういう理由で、シンフォニアの15番のシを弾いたときに、レ♯が聞こえることはないんです。

      シンフォニア15番は、最後に救いを求める性質の曲ではない、とも私は考えますよ。
      バッハの管弦楽組曲第2番ロ短調もそうですが、短調が短調のまま終わることで、一種の諦めの境地というか、「祈れば何でも救われるというわけではない」といった心情なのかと思っています。音楽家の直感ですけど。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です