織田信長も聴いていた(?)チェンバロ曲(ビデオ付き)
先日、ルネサンス時代のスペインの作曲家カベソンのチェンバロ曲を収録しました。今までもバッハより古いチェンバロ曲をいろいろ収録してきましたが、古さの記録更新です。生没年が1510-1566ですから、日本でいえば戦国時代です。
カベソンなんていう作曲家の名前を知っている人は今ほとんどいないのでしょうね。でも当時は「ヨーロッパで最も偉大なオルガン奏者」と言われた人です。
どうしてスペインなんていう国からそんなすごい人が現れたのでしょうか? それは、当時ヨーロッパで最も栄えていたのがスペインだからです。時は大航海時代。ポルトガルとともに、強大な軍事力で世界の海を制覇していました。
さて、何年か前にテレビで時代劇を見ていた時のことです。安土城の一室で織田信長が小さなヴァージナル(古い時代のチェンバロの一種)のそばに歩み寄り、右手で6つの音をポツポツと弾きながら「うむ、妙なる調べじゃ」とか何とか言っていました。
その時に信長が弾いた6つの音は、カベソンの曲の冒頭の主題でした。私がもう20年も前からレパートリーにしている曲ですから、すぐに分かりましたよ。「テレビドラマにしては、なかなか時代考証がしっかりしているじゃないか!」と感心したものです。
信長が安土城に南蛮人音楽家たちを集めて、当時のヨーロッパ音楽を演奏させて楽しんでいた、との記録が残っているそうです。どんな曲が演奏されたかまでは分かりませんが、当時のスペインやポルトガルの音楽の可能性は高いでしょうね。
というわけで、私たち日本人と意外なところで接点があった、とても古いチェンバロ曲をお聴き下さい。カベソンが作った「イタリアのパヴァーヌによる変奏曲」を、安土城にも置かれていたらしい「ヴァージナル」で演奏しました。
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https://imslp.org/wiki/Diferencias_sobre_'La_Pavana_Italiana'_(Cabez%C3%B3n%2C_Antonio_de)
こちらでしょうか、なにかべたべたしたというか、かならず右か左で連続した音を確保しているような感じを受けます。カベソンさんhttps://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%83%99%E3%82%BD%E3%83%B3-46399 独自の癖か、それとも当時はこんな感じなのでしょうか(宗教音楽とか声楽をひきずっているため?)
楽譜のリンク、それです。
この曲は変奏曲なので、変奏による細かい音を除くと曲全体がほぼ全音符や二分音符(時々八分音符)からなる原型が浮かび上がります。「連続した音を確保している」というのはこれですね。
カベソンの曲でも、フーガのような構成の曲はまた違った見た目になりますし、ガリアルドという飛び跳ねる舞曲の見た目はもっと違います。
久しぶりにヴァージナルの演奏を拝聴しました。独特の音色が、古めかしい曲調とよく合っています。
スペインから喜望峰を回って日本を目指した船に載せることができた鍵盤楽器は、おそらく
ヴァージナルとクラヴィコードだけだったかもしれませんが、新し物好きの信長には
それまで日本になかった「鍵盤楽器」は、さぞかし物珍しかっただろうと思います。
その後ほどなく、鎖国とキリシタン追放によって、西洋音楽との接点はなくなってしまいましたが。
変奏曲というのは、「同じ曲を繰り返して演奏する時には変化をつけたい」というのは
楽器を演奏する人の本能に根差している願望だと思うので、古今東西にあります。
雅楽にも、筝の第1奏者が技巧を聴かせる「残楽」という一種の変奏曲があるそうです。
ありがとうございます。
私は雅楽だけは今まで縁が無かったので、これを機会に聴くようにしますね。
ルネッサンスと戦国時代を繋いでるもので信長が小牧山城に見たイメージはモン・サン・ミッシェルではないかと演奏をお聴きして思いました。
コメントありがとうございます。
なるほど、そういうこともあったかもしれませんね!
歴史にロマンを感じます。