ゴルトベルク変奏曲を怖がらないで!(ビデオ付き)

バッハが晩年に出版したゴルトベルク変奏曲。あなたは弾いてみたことがありますか?

「そんな難しい曲、とんでもない!」という返事が、あちらからも、こちらからも、いっせいに返ってきそうな気がします。でも、バッハが知ったらきっと残念に思うことでしょう。だって、誰にでも弾けるような易しい変奏をバッハはちゃんといくつも入れているんですから。

ゴルトベルク変奏曲をピアノ愛好家の方々から遠ざけている最大の原因はたぶんこれでしょう。

「全音のピアノ教本難易度表」

私も子供のころに持っていましたが、全音楽譜出版社が出しているピアノ曲の楽譜の数々。それらの楽譜には「中級・第3課程」とか「上級・第5課程」などと書かれた帯が付いていて、何色の帯が付いた楽譜を持ち歩いているかで「ふん、あの子はまだ下手くそなんだ」とか「まあ、あの子は何て素晴らしい能力の持ち主なのでしょう!」などと自動的に判断されてしまうのでした。

その難易度表によると、バッハのインヴェンションとシンフォニアが弾けないうちはフランス組曲に手を出してはダメで、フランス組曲が弾けないうちは平均律クラヴィーア曲集に手を出してはダメで、平均律クラヴィーア曲集が弾けないうちはゴルトベルク変奏曲に手を出してはダメということになっています。

でもですよ、その最難関とされるゴルトベルク変奏曲の中には、インヴェンションが弾ければじゅうぶんに弾ける変奏が複数あるし、シンフォニアより易しい変奏だっていくつもあるんです。

もちろん、ゴルトベルク変奏曲を全曲通して弾こうと思ったら、それはもちろん大変なことです。ですが、通称「ゴルトベルク変奏曲」の正式名称は「2段鍵盤のチェンバロのためのアリアとさまざまな変奏曲からなるクラヴィーア練習曲集」です。これは曲集なのです。だから、好きな曲を選んで単独で弾いてもいいのです。というか、当時の社会状況からすれば、これを全部通して弾くなんて考えられないくらいです。

バッハは、たった1つのアリアから、考えられる限り多様な曲を作り出してまとめたわけですが、「多様な曲」の一環としてとてもシンプルで弾きやすい曲もちゃんと含んでいるのです。

ついでに言うと、正式名称にある「2段鍵盤」は、曲集全体の3分の1の変奏にだけ当てはまることです。残りはすべて1段鍵盤で弾けます。それどころか、バッハ自身がそういう変奏には「1段鍵盤で」と注記していることから、1段鍵盤で弾くべきものです。あなたがピアノで弾こうとしたときに、1段鍵盤用の変奏には何の障害もありません。

だからお願いです。あなたがピアノを弾けるなら、どうかゴルトベルク変奏曲をそんなに怖がらないで、易しい変奏を選んで弾いてみてください。バッハからのすてきなメッセージを受け取ることができるとお約束します。

 

先日収録したばかりのこの「第2変奏」も、かなり弾きやすいです。3声ですが、シンフォニアのほうがずっと難しいですよ。

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ゴルトベルク変奏曲を怖がらないで!(ビデオ付き)” に対して2件のコメントがあります。

  1. 芹澤ヨシノリ より:

    バッハに限らず、と言うよりバッハはもとより全音の難易度は出鱈目に近い。
    ソナタはスクリアビンが中級でシューベルトが上級とか、もうあり得ない表記だらけです。そして実は根が深い問題。
    閑話休題(それはさておき)。
    チェンバロの1段と2段とが入り交じっているという事は、全曲通して弾く場合、バリエーション毎にレジスター操作が発生するという事ですね。
    リサイタルでの通し演奏は、1段でしか無いピアノだからこそ慣例化したのかもしれませんね。案外グールドが取っ掛かりに過ぎないのかも知れないですね。

    1. 八百板 正己 より:

      この曲集は1段鍵盤用と2段鍵盤用が入り混じっていますが、そうでない普通のバッハの曲(組曲とか、「前奏曲とフーガ」とか)でも、楽章ごとに音色を変えて弾くというのが、バロック音楽の「コントラスト」の理念にかなった事です。

      チェンバロのレジスター操作は、じつはそんなに時間がかからないでできるんです。
      1つの操作に1秒くらいです。
      なので、楽章の間がそれによって間延びしてしまうほどのことはありません。
      どうしてもアタッカで行きたいときには、鍵盤を移動するだけで済むような音色を選んでおけば大丈夫です。

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