思わぬ収穫(写真付き)
どうしてチェンバロの譜面台にカラスの羽なんか並べたのかですって? だって、いっぺんにこんなにたくさんの大きなカラスの羽を拾えることって、なかなか無いんですよ。
カラスの羽を何に使うのかですって? チェンバロの弦をはじくための爪の材料です。羽の軸の部分を使って、幅2mm、厚さ0.2~0.3mmほどの板状に切り出して使うんです。
今、世界中のチェンバロの爪はほとんどプラスチックです。私のこの楽器も、作ってもらった時にはそうでした。でも何年かして一念発起して180本以上の爪を全部自分で鳥の羽に交換して、それ以来ずっと鳥の羽を使っています。手間はかかりますが、音が全然違うのです。
この日は新潟県妙高市のホールのワンコイン・コンサートに呼んでいただいて、フルートの仲間と一緒に演奏しました。数年前からこの時期に呼んでいただいています。
初めて呼んでいただいた年に、リハーサルの合間にホールの敷地を散歩しながら数本の大きなカラスの羽を見つけました。それをフェイスブックに投稿したら、それ以来数人の知り合いの方から時々カラスの羽をいただくようになっています。
このホールの敷地には、カラスが喜んで集まりそうな高い木がたくさん植えられています。しかもその下は芝生で、落ちたカラスの羽が遠くからでもよく見つけられます。先日もリハーサルの合間に10分くらい散歩しただけでたくさん拾えました。しかも、このホールのコンサートに私を推薦してくださっている地元の知り合いの方からも「さっきホールの周りで拾った」といって、私が拾ったよりももっと立派な羽を10本以上いただきました。この日の収穫だけで、あと半年近くは羽の心配をしなくて済みそうです。
コンサートの本番も思わぬ収穫でした。写真でご覧のように、会場はかなり広めです。それに天井も高いんです。フルートと一緒の曲はまだしも、音の小さなチェンバロの独奏にとってはちょっとつらい広さです。それなのに、演奏が始まると水を打ったような静けさで、すごい集中力で聴いて下さっているのを感じます。「この会場だから、曲によってはいつもよりも弦を重ねて大きめの音で弾かないといけないかな」と考えていた曲も、思い切って弦一列だけの小さな音で弾きましたが、音が小さければ小さいほど集中して聴いていただけたのです。
ワンコイン・コンサートなのに、お客様のレベルが高いですね! ホールの方に聞きましたが、もうこのシリーズは10年以上も続いているんだそうです。そうやって、このレベルの高いお客様が育ったのでしょう。特に地方の文化にとって、地に足のついた取り組みはとても大切なことですね。
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昨年も「妙高市のコンサートに呼ばれた時に、カラスの羽根を拾いました」
という記事を読みましたし、柏崎市で開催されたコンサートの記事も読みましたが、
柏崎市よりもっとずっと新潟市から遠い妙高市も、長い間の取り組みによって
チェンバロ音楽を初めとする文化水準が高まっているということですね。
東京一極集中が進む中、地方の文化水準が底上げされることが、
ひいては日本全国の文化水準の向上につながると思います。
八百板さんの活動が、それに貢献していることを、大いに称讃します。
嬉しいコメントをありがとうございます。
地方の公共ホールのあり方として、文化水準の底上げを目指すのは素晴らしいことですね。
八百板先生の活動は本当に大きいと思います。
ありがとうございます。ますます頑張りたい気持ちでいっぱいです。
今年も、おいでいただいてありがとうございました。私もコンサートを楽しませていただいた一人です。
皆さんが真剣に耳を傾ておられるのは、八百板先生の演奏前の曲の説明や、楽しいトークが大きいのではないかと思っています。決して演奏に水を差す意味ではありません。知らない曲でも、興味深くさせてくれます。
ご来場下さいました上に、嬉しいコメントをありがとうございます。
おっしゃるように、私はコンサートのトークが大好きですし、馴染みのない音楽をお聴きいただくために大切なことだと思って続けています。
これからもよろしくお願いいたします。