構ってあげないでいたら不機嫌に(写真付き)

不機嫌になったのは私の娘ではありません。楽器です。

私は3台のチェンバロを持っています。でも使う頻度は大違い。つい使い勝手のいい緑色のチェンバロばかり使ってしまいます。

さらに、今年は新型コロナでコンサートがなくなってしまったこともあって、この「ヴァージナル」という特殊な楽器はほとんど使っていませんでした。たまにチェンバロ教室の生徒さんがこの楽器にふさわしい古いルネサンス時代の曲をレッスンに持ってくるときに、独特の雰囲気を知っていただくために使ってみるくらいでした。

そのレッスン中に、「キーを押しても音が出ない」ということが時々起こるようになってきました。「これは楽器が機嫌を損ねたな」と反省して、先週からは毎日の基礎練習の時間に、装飾音の練習はこのヴァージナルを使うことにしたんです。

そうやって使い始めて数日後、もうそこらじゅうの音がキーを押しても鳴らなくなってきました!

原因は分かっているんです。一つは、弦をはじく爪が取り付けられた「タング」という部品の回転が渋くなること。もう一つは爪(カラスの羽の軸から削りだしています)が油切れを起こすこと。

で、まじめに2時間くらいかけて全部直しました。

ああ、キーを押すと素直に音が出るって、気持ちいいものですね! 楽器として当たり前のことなんですが、その当たり前のことを実現するのに、チェンバロの場合は自分で全てをする必要があります。

気持ちよく弾いていると(といっても装飾音の練習ですが)、壁にかけてある絵がすぐ近くに迫っています。忘れていましたね、ヴァージナルを弾くとこの絵がすぐ目の前に見えるということも。

この絵はもう15年くらい前ですが、新潟の古町にある画廊の奥様が描いたのを衝動買いしたものです。あたたかいパステル調で、普段はもっとメルヘンチックな絵を描く人なのですが、これは絵本の原画ということで越後の田園風景です。田植え直後の棚田の風景です。今実際の季節は秋で、毎日寒くなる一方ですが、この絵を見ていると春特有のウキウキした気持ちが蘇ってきます。毎日の練習の楽しみが一つ増えました。

 

追伸
私のこの特殊な楽器について、細部の写真入りで詳しく解説したページがあります。どうぞご覧下さい。

 

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構ってあげないでいたら不機嫌に(写真付き)” に対して9件のコメントがあります。

  1. 長野なお美 より:

    八百板先生
    おはようございます!
    3台のチェンバロは
    先生のお子様のようですね!
    (すると、4人のお子様‼︎)
    見た目だけでなく、性格も、
    得意、不得意‥すべて、
    ご存知です。
    このヴァージナルを観ながら、
    リュートの音色を想像し、
    更に、やわらかい棚田の絵を
    与えて頂き、本当に癒されます。
    ラテン語の格言は真実ですね。

    1. 八百板 正己 より:

      ヴァージナルの解説ページも読んでくださったのですね?
      ありがとうございます!

  2. Y.M. より:

    「本来楽器は演奏されるのが本望。このように展示されているのは心が痛む。」と、
    浅利守宏さんが、ルイ・ロットのフルートについておっしゃっていたことに通じますね。
    チェンバロのメンテナンスは自分で全てをする必要があるとのことですが、
    調律一つとっても調律師に依頼しなければならないピアノ、
    調子が悪くなったらメーカーに送って修理を依頼しなければならない電子楽器
    (それも、製造後数年間しか修理できない)に比べると、
    自分の手で楽器をいたわることができるのは、チェンバロならではだと思います。

    1. 八百板 正己 より:

      一年も前の投稿を覚えていてくださるとは嬉しいです!
      私は子供のころから工作の類が好きなので、楽器の調整も楽しんでやっています。

  3. 家合映子 より:

    楽器は生きていて、呼吸をさせてあげないとだめなのですね。オルガンも弾いてあげないとだめになります。家の電子オルガンでさえそうです。―それから、私も、八百板先生のような先生に衝動買いしてもらえるような絵を描ける絵描きになりたいなあと思いました。

    1. 八百板 正己 より:

      コメントありがとうございます。
      電子オルガンもそうなんですね?
      それから、家合さんの絵も見てみたいです。

      1. 家合映子 より:

        ありがとうございます。ほとんど今描いてないのです。でもそのお言葉、心に留めておかせて頂きます。(゜))<<。

  4. 芹澤克昇 より:

    こんにちは、八百板先生。
    皆さんとは少し異なる想いを申し上げます。
    拙宅では現在、グランドピアノ1台、ステージ用のデジタルピアノ1台、それ以外に電子系のキーボードとシンセサイザーを4台、所有しています。他にも出稽古の生徒さん宅に置いている電子ピアノや、ピアニカ・音源制作用の入力用MIDIキーボードを含めると、自分でも全部で何台の鍵盤楽器があるか把握しきれない位(..;)。普段の練習には妻がグランド、私がデジピを使用しています。たまにグランドを弾くと、妻は良い音なのに、私が弾くと、キンキン声で響きます。しばらく弾きこんでいくと、段々妻の時の音色に近づいていきます。彼等、明らかにヤキモチ焼きです。平等に可愛がらなければならない。楽器は本当に「心」を持っていると想います😀。

    1. 八百板 正己 より:

      コメントありがとうございます。
      「楽器がヤキモチを焼く」という表現、いいですね! 今後使わせていただきます。

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