美しいコントラスト(写真付き)
チェンバロスタジオで仕事をしていて、ちょっと気分転換に散歩に出ようと思ったら目に飛び込んできました。隣の家の柿と青空のコントラストが美しい!
ここ新潟はこれからだんだん晴れる日が少なくなっていきます。美しいコントラストを忘れないようにと写真に収めました。
雪が降れば、それはそれで白と黒のコントラストが美しいのですが、こういう色の対比は当分お預けですね。そうそう、雪国は冬の間ずっと白一色だなんて思わないでくださいね。白と黒のコントラストが美しいんですよ。
この写真を撮った日の夜にバッハのシンフォニア第5番をビデオ収録しました。偶然なのですが、私は今回この曲を、2段の鍵盤に全然違う音色をセットしてコントラストを味わうように準備してきたんです。なぜって、バッハにしてはとても珍しく、左手がずーっとリュート風の伴奏に徹しているからです。いっぽう右手はバッハ自身が大量に書き込んだ装飾音をまとった流れるようなメロディー。これはきっとバッハも右手と左手のコントラストを狙ったに違いありませんよ。
あなたはどう思いますか? 収録したばかりの私の演奏を聴いてみてください。右手と左手が全然違う楽器でアンサンブルしているみたいでしょう?
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おはようございます。
先日のゴルトベルク変奏曲第15変奏もそうでしたが、右手と左手で音色や表情の
コントラストを際立たせることができるのは、2段鍵盤のチェンバロならではですね。
リュート風の左手が、かなり自由にルバートしているように感じられたのも興味深いです。
コメントありがとうございます。
2段の鍵盤で音色を対比させるという発想はオルガンから来たものなんですよ。
なるほど。
2段鍵盤のオルガンは、もともと、それぞれの鍵盤が別々の「オルガン(鍵盤につながっている一まとまりのストップの集まり)」を演奏するために作られたと、
ずっと前に、八百板さんからご教示をいただいたことを思い出しました。
バロック音楽の重要な要素である「対比」は、協奏曲のソロとトゥッティのように時間が異なる場面での対比だけでなく、
鍵盤音楽の右手と左手のように同時進行する複数の声部の間でも対比が探求されていたのですね。
バロック音楽の対比はまだありますよ。
「旋律声部対通奏低音」もそうです。
ルネサンス・ポリフォニーは全声部が同じ重要度でしたが、バロック音楽に登場した通奏低音では複数の旋律声部にも対抗できるほどに重要度を増した存在です。こんなに低音が重要になった時代は西洋音楽の歴史でバロックだけです。
ありがとうございます。
偏見かもしれませんが、古典派になるとピアノの左手は
「ドソミソドソミソ」か「ズンチャッチャ」ばかりという
純然たる伴奏に引き退ってしまう感じがします。
そうですよね。
それも「古典主義」という美学に沿った表現です。
そのことによって、対比(対立)を回避して整然とした調和を目指したわけです。
コントラスト、とはちょっと違った方向の話になるのですが。。
先日、八百板先生から届いた教材案内メールのなかに、「バッハ演奏で考慮すべき時代考証のキーワード」という項目があり、「鍵盤楽器に託された他の楽器の響き」という項目がありました。
今回先生は、伴奏パートをリュート風の音色に変えて演奏していましたが、インベンションやシンフォニア(他の鍵盤楽器曲でも)のなかに、同様に他の楽器の音色をバッハが念頭においていたのではないか、と思われる曲はあるのでしょうか?
例えば、私は以前から、インベンション8番の冒頭部分は、トランペット等の金管アンサンブルでのファンファーレのようだと思っていたのですが、(株)東音企画 刊 「バッハ インベンション解説ブック」の同曲解説ページ扉に「金管楽器が鳴っているような華やかな始まりの曲~」とありました。
解説を書かれた方と私が、単に同じようなイメージを持っただけかも知れませんが、バロック時代、トランペットやサクバット(現代のトロンボーンの元になる楽器)は、教会音楽では神の栄光を表すため、宮廷では儀式の際の奏楽で王の権威を示すため、ティンパニ奏者と共に重用された歴史があるので、バッハの子息の教育用に書かれた曲ということで、将来的に宮廷や教会に仕えてこれらの楽器を使った作曲をする必要が出たときに備えて、前述の楽器を用いた曲の「定型」となるような雰囲気で8番を書いたのではないかと、素人ながらに思うのですが。。
(あるいは、オルガンを使用したファンファーレ的な音楽など)
コメントありがとうございます。
私もインヴェンション第8番の主題は金管楽器のイメージです。ただし、ヘ長調なので私の中ではトランペットでなくホルンですけれど。
バッハがインヴェンションとシンフォニアを作った意図は自筆浄書譜の表紙にバッハの手で書かれていて、「最終的には作曲のレッスンのため」です。おっしゃるとおりです。