悪魔的なバッハ演奏に大興奮!(ビデオ付き)
久しぶりです! 他人のバッハ演奏にこんなにも興奮したのは!
YouTubeで見たバッハのヴァイオリン協奏曲の演奏が凄すぎて、「これはぜひ皆さんに知らせなくちゃ」と思って、予定していた仕事を後回しにしてこれを書いています。
あなたは、バッハのヴァイオリン協奏曲「ニ短調」BWV1052Rという曲があるのをご存じですか?
「ニ短調のヴァイオリン協奏曲なんてあったっけ?」バッハに詳しい人でも首をかしげるかもしれません。これは、バッハ自身によって後にチェンバロ協奏曲に編曲された、その原曲を復元して演奏したものなんです。
普段はYouTubeで他人のバッハ演奏を聴かないようにしている私です。だって、時間を無限に吸い取られてしまいますからね。ですが、ヴァイオリン協奏曲としての原曲は聴いたことがなかったので、「忙しいんだけど、どんな感じかちょっとだけ聴いてみようかな」と興味本位でクリックしたんです。
そうしたら、あまりの凄さに最後まで身動きできずに見てしまいました。そう、「聴いてしまいました」ではなく「見てしまいました」です。さらに、終わってすぐにもう一度再生している自分がいました。さらにもう一度再生しました。20分少々の曲ですから、合計で1時間以上その動画に釘付けだったことになります。
何が凄いって、とにかく悪魔的なんです。「こんなふうにバッハを弾いてもいいのか! っていうか、これこそがバッハの激しい思いそのものじゃないか!」「バッハ演奏もついにここまで来たか!」様々な思いがいっぺんに押し寄せてきました。
演奏するのはオランダバッハ協会(Netherlands Bach Society)。指揮者兼ソリストの佐藤俊介氏はなんと日本人です。同協会がバッハの全作品を古楽器演奏で網羅する動画をYouTubeで公開する、というとんでもないプロジェクトの一環として収録された動画です。
公開日を見たら、2019年7月16日とあります。再生回数124万回、高評価も2万件ちかくあります。4年以上も前にこんな動画が公開されていたなんて、全然知らなかったなあ。
ところで、あなたは「古楽器演奏」と聞いて、どんなイメージをお持ちですか?
古楽器演奏が始まった1960年代は、単に楽器が古くなっただけの演奏も多かったようです。「なんだかパッとしない、いぶし銀のような渋い響き」なんて言われていたそうですよ。
私もチェンバロ奏者ですから、バッハの音楽をバッハの時代の楽器(の復元楽器)を使って現代に蘇らせるという「古楽運動」の一端を担っているという自負があります。「バッハはそんなに堅苦しく弾いちゃダメです」「バッハはもっと人間的なはずです」「バッハは当時の人たちにとっては現代音楽だったんです」と、事あるごとに叫んできた私です。
でも、まだまだ全く足りませんでしたね。「いくらなんでも、バッハをこんなに激しく弾いている人は見かけないから」と、自分で自分にブレーキをかけてきた面もあると思います。
ああ、言葉を連ねても伝わらないのがもどかしいです。とにかく彼らの演奏を聴いてみてください。そして、あなたの感想を聞かせてください。
あ、そうそう。この動画はバッハがこの曲を初演した時のケーテンの宮廷楽団の編成(各パート1人ずつ)で演奏されていて、時おり出てくるヴィオラのソロは、バッハ自身がここの宮廷楽団でヴィオラを弾きながら指揮をしていたことを反映しているんですよ。
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なんと気持ちのいい悪魔でしょう!!!
昂奮しました!!
佐藤氏の演奏は知っていましたが その中でも格別ですね。
土曜日に控えたコンサートを前に 昨日の最終合わせがあまりパッとせず気分が落ち込んでしまいましたが 晴れました!
やはりバッハはこうじゃなくちゃ! ズキズキわくわく です!!
八百板さん 動画のご紹介ありがとうございます!!
(初コメントでした笑)
初コメントありがとうございます!
そうですよね、やはりバッハはこうじゃなくちゃ! ですよね。
私もこの演奏を聴いたとき、いろいろ上手くいかなくて腐っていたのですが、いっぺんに元気に前向きになりました。
私のイチオシにこの賛辞、大変嬉しいです。
佐藤俊介さん,毎年日本で公演されてますよ。
ライブ感が半端なくてとってもワクワクします。
オランダバッハ協会のAll of Bachの動画、とても素敵なものが多いです。
イチオシだったんですね。
私ももっと早く気付いていれば。
これから私もいっぱい聴いて追い上げますよ。
メルマガに動画の添付、大変有難うございました。曲は知っていましたが、流石に古楽のメッカのオランダは、一歩も二歩も、、十歩くらい進んでいますね。
ここ数年、NHK FMで早朝から放送の「古楽の楽しみ」を聴いているのですが、欧州の古楽演奏団体の、良い意味で冒険心溢れる活気に満ちた演奏を聴く事も多く、そういう演奏に出会えた時は、新鮮な喜びを感じます。
全員ではないのかなと思いましたが、弓がバロックボウなのも興味深かったです。
(あと、背後の絵画。。レンブラントでしょうか、、人物が「ねえねえ、なんかスゴい事やってるよ!」と言わんばかりに写っていて、面白く。)
本当に進んでいますよね。
わたしが「すごいな」と思うのは、確かにパッと聞くとなんだか好き勝手にいじっているみたいに感じたりもするんですけど、でもそれが確かな考証に裏付けられていて、とても説得力があることです。
弓は全員バロックボウです。バロックボウにもいろいろ種類があるみたいです。
背景は全部レンブラントですね。この会場はレンブラントの美術館らしいです。
私もこのチャンネルは時々見ますが、確かに悪魔的というかかなり尖った演奏ですね!
普段はあまり聞かないようなスタイルに感じます。
特にケーテン時代の楽団では考えられなかったようなスタイルではないでしょうか?
ジャズやロック、ポピュラー、J-POP 、クラッシック、節操なく聴く私などにとっては結構ありです。
昔読んだ本に「バッハの音楽はホッキ貝のごとく,煮ても良し、焼いても生でも良し」などとあったのを思い出しましたが、どんな演奏であってもバッハの音楽自体がぐらつくことは決してないと言えるのでないでしょうか?
この演奏の通りに当時演奏されていたかは誰にも分かりません。
けれど近年の研究によると、このくらい楽譜から離れた演奏が当時されていたことは確からしいですよ。
この曲のように作曲当時に出版されなかった曲の場合、どうせ作曲者自身が指揮をするのですから、楽譜には最低限のことしか書かなかったわけです。
ここまで楽譜から離れてもいいんだ、ということになると、これからの自分の演奏でも解釈の可能性がぐっと広がります。
バッハの「ヴァイオリン協奏曲 ニ短調」という言葉を見て、すぐに
「2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調(BWV1043)」を想像したのですが
それとは違う曲でしたね。
バッハの時代には、協奏曲の独奏楽器をヴァイオリン、チェンバロ、オーボエ、フルートなど
自由自在に取り換えて演奏することが普通だったと思います。
逆に言うと、古典派以降の協奏曲と違って、独奏楽器固有の性能を極限まで追求しなかった、
(パガニーニのヴァイオリン協奏曲で、ソロがa””を出す箇所がありますが、
モダンピアノとピッコロ以外の楽器は、こんな高い音は出せません)
ヴィルトゥオーゾ性を追求するよりも、得意な楽器を使って合奏する楽しみを求めていたのが
バロック時代の協奏曲だったのかもしれないと思います。
ただ、この協奏曲の独奏パートは、ヴァイオリンの特性に大きく依存した書き方がされているんですよ。
チェンバロ協奏曲としての独奏パートが、チェンバロにとっては不自然に弾きにくいところがけっこうあります。
ずっと前に私は楽譜を見てすぐに「これは原曲はヴァイオリン協奏曲だったに違いない」と思いました。その後になって、研究者たちも同じ意見だということを知って、嬉しかったですね。