天気と練習
天気がいい日は、気分も良くて、楽器の練習もはかどると思いませんか?特に、雪国の春の晴天は格別ですよね。
では、雨の日はどうでしょう?雨の日は好きですか?大雪の日は?嵐の日は?猛暑の日は?
私の場合、気持ちが晴れないまま楽器に向かうと、大体ろくなことがありません。難しいところが普段以上に弾けないし、丁寧に繰り返し練習しようと思ってもやる気が失せてくるし、好きだったはずの曲が嫌いになってきたりもします。あなたはどうですか?
昔、私がまだアマチュアだった頃、ある文章を目にしました。
ある真夏の炎天下に、老婦人が農作業をしているところを通りがかりました。「暑くて大変ですね。」と声をかけると、返ってきた言葉がこうでした。「おかげさまで、作物がよく育ちます。」
当時の私はこれを「なんて素晴らしい自己犠牲の精神なんだ!」と感動したものでした。
ですが、自分で演奏活動をするようになって、自分の心の持ち方が自分の成果を大きく左右する現実を突きつけられるにつれて、考えが変わってきました。「自己犠牲だ」と言って我慢しているようではダメなんです。その老婦人はきっと心から夏の暑さを喜んでいたのだろう、ということが分かってきました。
よく、「試合でも舞台でもテストでも、本番の日には自分の持つ能力をフルに発揮できるように、どんなこともプラスに捉えるように努めよう」などと言われます。それは全くその通りです。その上で、それは本番の日だけで大丈夫なのかな?と考えてみる必要があると思うのです。結婚式でスピーチをするとか、何か大きな催しの司会をするとか、そういったことは当日の心の持ち方次第で大丈夫でしょう。でも、楽器の演奏はそうは行きません。練習が十分にできていないものは、本番当日にはどうする事もできないのですから。
ということで、私は毎日の練習をどうしたら気持ちよくできるだろうか?と考えるようになりました。天気が悪いだけでも、受身の姿勢で流されているとどうしても気持もふさぎ気味になるので、意識してその悪天候のよい面を探すようにします。雨の日なら、雨にぬれた土のにおいを嗅ぐことができる、雨にぬれた木々の緑が色鮮やかだ、普段は埃っぽい道もきれいに洗い流されている、とか。花粉症にお悩みの方なら、今日は花粉が飛ばない、とかですね。
それでも、他にも嫌なことが重なったりして気分が最悪の日には、なかなか悪天候のよい面に目を向ける余裕がありません。そんなときには、無理やり大げさな笑顔を作って窓の外を眺めてみます(誰も見ていない所でやれば変人に思われないから大丈夫)。笑顔を作ると、笑顔のときにしか使わない筋肉が刺激されるので、脳の深いところで「これは今、良いことが起こっているに違いない」と勘違いをするんだそうです。すると、そこからよい事の連鎖が始まるのです。「笑う門には福来る」は科学的にも根拠があったんですね。
さあ、これで今日からあなたの練習効率は飛躍的に高まることでしょう。
あなたのコメントをお待ちいたします
下のほうのコメント欄で、あなたのお考えをお聞かせくださると嬉しいです。
(システムの都合により、いただいたコメントがサイトに表示されるまでに最長1日程度お時間を頂戴する場合があります。あらかじめご承知くださいませ。)
私の場合は晴れの日はどちらかというと心は外に向かってしまうように思っています。
1月、2月、3月、11月、12月はピアノに向きやすいように思っていました。
バッハが素晴らしい音楽を残したのは、寒いドイツの気候だったからなのかななどとも。
しかしプロの方は天候などに関係なく楽器に向かわれるのですよね。
コメントありがとうございます。
「1月、2月、3月、11月、12月はピアノに向きやすい」
「バッハが素晴らしい音楽を残したのは、寒いドイツの気候だったから」
いずれもそのとおりだと思います。
私の演奏が、もし内省的な、地に足の付いた演奏だとしたら、それは雪国で暮らしているおかげだとも思います。
私も、あまりに素晴らしい天気だと(特に春の晴天)、スタジオにこもっていないで外に出かけたい気持にもなります。でも、会社勤めの方々が勝手に仕事を休めないように、私も天気がいいというだけの理由で練習を休みはしません。
その代わり、練習の合間に近くを散歩したりします。3分か5分散歩するだけで、天気のいい日はその後の練習がとてもはかどるんです。
(コメントのコメントのようなものですが)私自身は一応主婦ですから、
天気が良いと洗濯、掃除、布団干し・・などが気になります。雨の方が、ゆっくりと一つのことに集中しやすいです。かといって練習する部屋が寒いとそこに行くのも億劫になりますし、暖かい陽射しに幸せを感じます。そして明るいうちに練習するようにしています。
家合さん、コメントありがとうございます。
なるほど、雨のほうが家事のことを考えなくていいんですね。私もじつは、あまりに感動的に美しい日には、外が気になって練習に集中できないこともあるんです。
「暖かい陽射しに幸せ」すてきですね。チェンバロスタジオは楽器の調律を保つために朝からずっとエアコンを付けっぱなしなので、陽射しのありがたさに私はちょっと鈍感になっていたかもしれません。
八百板先生の仰るとおりに、ピアノの練習がしたくない(できない日)も最近は多いです。
私自身が慢性疲労症候群・繊維筋痛症という身体中がだるくて痛い病をもう7年も得ているからかもしれません。それでも、いかなる病をも克服して多くの有名な作曲家もピアニストもオルガニストもバイオリニストも全ての音楽奏者は生身の人間として崇高な音楽により、神の領域である音楽と共に生きてきました。
特に最近しんどくなった慢性疲労症候群では身体中が鉄か鉛のように感じられて…ピアノどころでもないのですが、それでも、暗譜した曲を更に深めたり、簡単な練習曲をおさらいしたり。
天気というより体調に左右されることも多いです。
そんなときも八百板先生のバッハの練習法が多いに助けられています!!
少しくらい体調が良くなくとも、この方法ならミクロ単位でも完成に向かって歩いていて行く楽しみや幸福があるからです。
バッハの曲は宗教的ですので、弾いていても慰められます。音楽を奏でる恵みと支えが、わが人生にあることを感じています。
ありがとうございます。
ご丁寧なコメントをどうもありがとうございます。
私の本がお役に立てまして嬉しいです。
他人との比較ではなく、自分の演奏がわずかずつでも良くなっていくことは、私にとっても救いになります。