私だけの桜の名所(写真付き)
今年も出会えました。私だけの桜の名所です。
三条の自宅から見附のスタジオへの通勤に使う2つのルートのひとつ、県道8号線から見える八重桜です。市のホームページを見ても載っていないし、現地に行っても看板が立っているわけでもないから正式に名前もないと思うんです。インターネットでいろいろ検索しても埒が明かないので、googleマップを大きく拡大したら「長嶺の桜並木」と表示され、愛好家が掲載した写真もありました。
初めてこの桜に気がついたとき(もう14年も前)は胸が高鳴りましたね。結婚して三条に引っ越してきてはじめての春だったので、三条市内のことは良く分からない私でした。県道を運転しながら見た感じでは、絶対何かの施設(公園とか、広場とか)に見えるんです。周囲の田んぼより2mくらい高い台地の縁に、40本ほどの八重桜がきれいに植えられているんですから。でも、狭い農道をぬって現地に行ってみると、ただの草地なんです。畑だったような跡は見られますが。ミステリーです。何か裏話がありそうです。三条に生まれ育った妻に聞いても知らないというので連れて行って見せました。妻の母も知らなくて、やっぱり連れて行きました。
八重桜はいいですよね。ソメイヨシノと違って花が長く咲くので数日差で散ってしまう心配がありません。花の時期も遅いので、ソメイヨシノの花見をしそこなった年でも挽回できます。ずいぶん暖かくなってから咲くので、「花冷え」なんていう言葉とも無縁。この日もポカポカ陽気の中で気持ちよく寄り道して写真を撮りました。
私は高校、大学と写真部員でした。撮る技術はさほど上達しなくても、見る目だけは肥えていきます。シャッターを押す前から「電波塔が写り込まないように」「県道を走る車が去ってから」などと、否定的な材料がずらーっと頭に浮かんできます。どうにかそれらをクリアしたのが上の写真ですが、自分ではちっとも納得いきません。中途半端に写った飛行機雲は仕方ないとして、せめてこの電波塔がなければ、もっといい対角線の構図で撮れるのに。
私の場合、風景写真を撮るといつもこうです。「今年もこの桜に会えた!」とワクワクして寄り道したのに、いい気分はどこかに行ってしまっています。気がつけば、スマホの画面を通してしか桜を見ていません。まして花を手で触ったり、香りがないことは分かっているけど香りを嗅いでみるなんていうこともしていません。そのままうっかり、否定的な気持のまま車に戻るところでした。
私はスマホを片付け、花に顔を近づけ、じっくり見つめ、手で触り、香りがないことは分かっているけど香りを嗅いで、花に集まる蜂の羽音に耳をそばだて、そして深呼吸しました。その瞬間、私はすぐそばに立つ電波塔のことも、少し離れた県道を走る車のことも忘れていました。私の心の中にある、私だけの桜の名所のイメージそのものでした。
音楽でも同じようなことがありますね。
今や私たちは、音楽の殆どを録音で聴きます。録音だと些細なミスがやたらと気になります。だからその感覚で、コンサートで演奏するときにミスを恐れて弾きたい曲を諦めたり、演奏活動自体が怖くて始められない、といった話もよく聞きます。でも、コンサートって大してミスが気にならないんですよね。演奏者がありったけの感情を込めて熱演すればするほど、聞き手は音を聴くのでなくて演奏者の心を丸ごと受け取ってしまうので。(もちろん、演奏者自身が「間違えないように」「間違えないように」なんていうことばかり考えていては、聴き手もシラけるのでミスしか聞こえなくなりますけど。)
あなたが次にコンサートを聴きに行くときには、どうか「電波塔は写り込まないか?」「県道を走る車が写っていないか?」なんていうことに気を散らさないで、音楽そのものの美しさを丸ごと受け取ってくださいね。そうすれば、あなたの心の中にある、あなただけの名曲のイメージそのものと出会えるでしょう。
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三条から見附まで、いつも国道だけ通っています。長嶺の桜並木というのは知りませんでした。
拡大して眺めてみました。手前の桜並木の向こうに見える左の濃淡の桜、続いて見える若草の緑色、きれいな場所ですね。濃いのも薄いのも同じ八重桜なのでしょうか?八重桜は葉が邪魔になっていたのですがこの写真は気になりませんでした。いつか見られたらいいなあと思います。先ほど光さんのヴァイオリン独奏をfbで聴いたばかりでした。桜と音楽に出会えてとてもよかったです。
コメントありがとうございます。
八重桜でも木によって色の濃淡がさまざまですね。梅のように紅白を対比させて植えたのでしょう。ここには数本の枝垂桜も植えられていますが、この写真に写っているのはみんな八重桜です。
本当に綺麗ですね!
先生には絵(構図)の才能もある、きっとそうだ、と思いました。
家合さん、嬉しいコメントありがとうございます!
学生時代に写真部に入ってとにかく鍛えられたのが構図と光です。当時は家族写真はカラーでも、芸術を追求する写真はすべて白黒でしたから、色を抜きにして画面を構成することを学びました。
あまりにも写真が綺麗だったので、文章をよく、充分に読まないで、コメントを送ってしまっていたことに気が付きました。先生は写真部で鍛えられていたのですね。やっぱり・・!と思いました。
それにしても、演奏者がありったけの感情をこめて熱演すればするほど、聞き手は音を聴くのでなくて、演奏者の心を丸ごと受け取ってしまうー、心に留めておきたいと思いました。
家合さんは絵の勉強もなさったのでしたね。美しいものを見る見方を一度身につけると、人生豊かになりますね。
この八重桜も散り始めたので、今日も立ち寄りました。せっかくだからと桜の本数を数えてみたら、道から見えないところにも結構植えてあって40本! 「20本」と書いていたのを訂正しました。