「木製の楽器は湿気で膨らむ」というけれど
よく私は「チェンバロは温度計湿度計みたいなものです」と発言します。
部屋の温度が2度変われば、調律の手直しが必要になります。
部屋の湿度が5%変われば、調律の手直しが必要になります。
原因は、木製の楽器本体に金属弦が張ってあるからです。
詳しく説明しましょうか。
金属でできた弦は温度によって伸びたり縮んだりしますが、木でできた楽器本体はほとんど変わりません。
いっぽうで湿度が上がると、特に薄く削って作られた響板(弦が張ってある部分の板)は、湿気を吸って膨らもうとするので、弦の張力が高くなるのです。
と、一般論ではそうなのですが、季節の変わり目などで「あれ?」と思う現象に出会います。
「湿度が前の日と同じくらいで、気温だけが今日はけっこう高め」だとしましょうか。予想としては「弦が伸びるから全体のピッチが低めになっているだろう」と考えるわけです。
それなのに、逆に前の日よりも全体のピッチが高めになっていたりするのです。
チェンバロを所有してからの数十年、ずっと不思議に感じていたのですが、少し前に思い当たりました。
それは「相対湿度と絶対湿度の違い」です。
私たちが日常「湿度」というとき、それは相対湿度のことです。その時の温度で含むことのできる水蒸気量に対して、どのくらいの水蒸気があるかを%で表します。相対湿度が100%になると、そこらじゅうに結露が生じます。でも部屋を暖めれば、暖かい空気にはたくさんの水蒸気を含むことができるので、相対湿度は下がり、結露も乾いてくれます。
一方で、これとは別に「絶対湿度」というものがあります。1立方メートル中に水蒸気が何グラムあるかで表します。部屋を暖めても、空気中の水分子の数は変わらないので、絶対湿度は変わりません。
上のほうで挙げた「湿度が前の日と同じくらいで、気温だけが今日は高め」の場合について考えてみましょう。
「湿度が同じ」といいますが、これは部屋の湿度計が示す数字、つまり相対湿度です。今日は前の日よりも気温が高いのに相対湿度が同じということは、空気中には前の日よりも水蒸気の分子をたくさん含んでいるわけです。たくさんの水蒸気の分子が響板のあたりに群れているのです。結果として響板が多くの湿気を吸って、弦が温度変化で伸びる分よりも響板が湿気で膨らむ分が大きいなら、結果としてピッチは高くなるというわけです。
びしょびしょに濡れた洗濯物を乾かす場合と、元々じゅうぶんに乾燥している楽器が水蒸気を吸ったり吐いたりする場合では、考え方を変える必要があるのかな? というのが、今のところの私の見解です。
この推論、合っているでしょうか? どなたか物理が得意な人、教えてもらえませんか?
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