やっぱりバッハの曲だった!
じつは子供のころから密かに好きだったこの曲。「バッハの真作ではない」と新バッハ全集から外されていたことを知った時に私はショックだったんです。
でも、最新の研究で「やっぱりバッハの曲らしい」と言われるようになって嬉しい!
「組曲 変ロ長調 BWV821」おそらく誰も知らない無名の曲です。なにしろ新バッハ全集から外されていますから、楽譜を手に入れるにはインターネットで旧バッハ全集の楽譜をダウンロードするしかありません。
私がこの曲を知ったのはたしか高校生か、大学生になっていたかもしれません。版権がとっくに切れた旧バッハ全集を縮刷したアメリカ製の安いポケットスコアを大量に買い集めた中に入っていました。
録音を聴いたこともないバッハの隠れた名曲を発見したような気になって、得意になって弾いていたのを思い出します。
どうしてBWV番号もちゃんと付けられた曲が後になって「バッハの曲じゃない」と判断され、またどうして「やっぱりバッハの曲らしい」と復権したのか、興味がありませんか?
この曲が現在まで伝わった経路が、バッハとは直接のつながりがない人物による、バッハの死後数十年もたってから写譜されたたった一つの楽譜だけしかなかったからです。証拠を重んじる新バッハ全集の編集方針では、そういう曲は一律に「バッハの真作か疑問」というレッテルが貼られる決まりになっているそうです。
ところが、1980年代になって、バッハがごく若いころに作ったオルガン曲が30曲以上もまとまって発見されたのです。「ノイマイスター・コラール集」といいます。その中の1曲の最後の部分が、今話題にしている組曲変ロ長調の最終楽章の最後の部分とほとんど同じなのです。オルガン曲のほうはバッハの真作と判断されたので、組曲変ロ長調のほうも若き日のバッハの曲だろうという見方が出てきたわけです。
これで私は、大好きなこの曲を堂々と「バッハの曲です」と胸を張って演奏できます。収録したばかりの演奏をお聴きください。
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その一方で、あの破格に有名なト長調のメヌエット、未だに「バッハの」って接頭詞つけて呼んでますね。夫を亡くしたばかりのアンナのために、収録して上げたバッハの寛容さと優しさから、実質的にバッハ作とするのも悪くは無いですけど。
「バッハ」という単語の威力が絶大ですから、何とか理由を付けて「バッハ作」と呼びたい気持ちも理解できます。