誕生日に出会ったすごい人(写真付き)
56歳になりました。
でも今日の話題は私の56年間の思い出とか今後の抱負とかではありません。56歳の誕生日に、すごい人に出会ってしまったんです。
新潟県三条市の自宅から車で5分くらいのところにある小さな工務店の社長と知り合いになったので、会社に挨拶に行ってきました。その応接室の天井がこれですよ!
社長さんが自分で設計して建てたんだそうです。まるで八角堂。文化財級の寺院建築でしか見ることができないと思っていたものが、会社の応接室だなんて。しかも全部自分で建てたなんて。それも私の家のすぐ近くに!
興奮していたものだから、肝心の社長さんの写真を撮るのを忘れてしまいました。小学5年生のときから父親の大工仕事を手伝い、弱冠23歳で初棟梁を務めた、叩き上げのベテランです。69歳の今でも現役の棟梁です。私が56歳になった程度のことでブログを一つ書こうなんていう気は失せてしまいましたよ。
話は社長さんのご先祖の話になって、またまた驚きました。下の写真を見て下さい。
社長さんのご先祖が元禄6年に建てた鐘楼です。
元禄ですよ。バッハが子供の頃ですよ。300年以上も昔からずっとこの地で大工の伝統を継承し続けている家系なんだそうです。伝統の重みを感じますよね。
それなのに、社長さんの話では、今の若い人たちは昔ながらの大工の手業なんかには全然関心が無いんだそうです。それどころか、そういう古い伝統を敬遠さえして、デザインが現代的でお洒落なだけのローコスト住宅を建てることしか選択肢が無いみたいだというんです。
チェンバロも手作業で一つ一つ作る木工製品なので、材料や手間をケチると後でどうなるのか私もよく知っています。合板とプラスチックを多用した格安チェンバロが一時期日本中にたくさん出回りましたが、そのすべてが今は演奏不能、修理不能です。格安の家なんてまさに「安物買いの銭失い」で、後で大変な出費になるんですけどね。
300年前に栄えたチェンバロが一度歴史から姿を消して、それが20世紀になって復活して、でもバッハの時代にこの楽器がどういうふうに演奏されていたのか誤解だらけだったのを、音楽学者と演奏家が手を携えて根気強く一つ一つ解決しつづけ、今ようやくバッハ自身が望んでいたような演奏の姿が明らかになってきて、それを一人でも多くの人にお伝えしようと私もがんばってバッハを弾き続けています。
この道を選んだことに迷いは無いつもりでしたが、時には自分一人で孤独な世界に放り出されたような気持ちになることもありました。
それが今日、69歳のベテラン棟梁に出会って、「歴史を継承しようと頑張っている人がこんな近くに住んでいるんだ」と大きな勇気をもらったと思うんです。とっても素晴らしい56歳の誕生プレゼントです。
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八百板先生!
お誕生日おめでとうございます(*゚▽゚*)
素晴らしい技術の持ち主に出会われたんですね!!!
わたしもぜひこちらの建築物実際に拝見したいです♪
明日はよろしくお願い致します!
ありがとうございます。
佐藤さんのお仕事にもつながるといいですね。
Happy birthday!
Thank you!
お誕生日おめでとうございます!
今年はどんな文がでるかなあ?と楽しみにしておりました。
素晴らしい先輩に会われて良かったです。
三条のことはあまり知らないでおりますが、歴史ある都市だと思いますのでこれからが楽しみです。
私の卒業した小学校の校歌を作詞された方が三条に住んでおられたようなのです。調べてみましたが
あまりわからないままです。
金物で有名ですから昔は刀鍛冶などもおられたのかな?なども思っていました。
健康で素晴らしい音楽を奏で続けられますように!!!
私の初期のブログから長い間ずっとお読みくださってありがとうございます。
私も三条の魅力の発見はこれからも続きます。
すてきなことに出会ったらまたご紹介しますね。
お誕生日おめでとうございます。私も5月生まれの牡牛座ですので、とっても光栄です。
お誕生日に、伝統を大切に継承していらっしゃる方に出会われるとは、やはり似ている方同士引き合ったのでしょうか。バッハが子供の頃に建てられた鐘楼にも感激しました。宗教は違っても、鐘の音が私たちの心に敬虔な思いを呼び覚ます点は、同じだと思います。いつも先生には心に力をいただいていて、感謝しております。これからもますますお元気で、ご指導をよろしくお願いいたします。
ありがとうございます。山川さんもおめでとうございます。
鐘の音が世界の宗教で重要視されるのは、一説によれば鐘の音に含まれる高次倍音が人の免疫を高める効果があると昔の人が気付いていたからだ、といいます。それならチェンバロの音も高次倍音が豊富ですから、チェンバロを聴いて健康になれますね。
おめでとうございます。
古楽にしても先生がおっしゃる通り、音楽家、学者、研究者その他大勢の人たちのご努力で今がありますよね。
そう言うものをしっかりと後代に伝えていかねばならないと思います
ありがとうございます。
古楽復興の一番の功績は聴き手だとも言えます。特に復興の初期には既存の音楽界から異端として徹底的に無視されたそうですが、聴く人々が古楽を支持してくれたおかげでその流れが変わって今があるんです。
お誕生日おめでとうございます。
チェンバロは、バッハの没後ほどなくして廃れてしまい、そして20世紀に復興しましたが、
教会のパイプオルガンは、バッハが活躍していた時代のオルガンが、今でも現役だと思います。
それはやはり、教会や寺院の鐘楼の鐘と同じで、何百年もの間「鳴らされ続けてきた」ことで、
今の聴き手にも感銘を与えるのだと思います。
ありがとうございます。
ヨーロッパでは500年前のオルガンも修理され続けてずっと受け継がれているそうです。現代は科学技術は進歩しましたが、美しい音を奏でるパイプを1本作るというレベルで500年前のオルガン製作家の技術をいまだに超えられないのだそうです。