季節はずれの鳥の声(ビデオ付き)

秋ですね。

いろんなことが一気にやってきます。一面の黄金色だった田んぼが刈り取られて茶色になったと思ったら、秋らしいひつじ雲やうろこ雲が見られるようになって、赤とんぼがたくさんやってきて、今では柿の実がおいしそうなオレンジ色に変わってきています。

と、やってくることには気が付きますが、去っていったものは「あれ? いつのまに?」という感じで気が付きにくいものです。夏の鳥たちもそうです。ツバメは? クロツグミは? カッコウは? みんないつの間にか南の国に行ってしまいました。

実は先日、チェンバロのための「かっこう」という曲を収録したんです。練習しているときも、収録している時も、作品と自分の演奏のことで頭がいっぱいです。で、無事に収録してから気がついたんです。「そういえば、もうカッコウの季節は終わっちゃったな」って。

 

カッコウといえば、いかにも「音楽にして下さい」と言わんばかりの、楽譜に表しやすい鳴き声ですよね。時計にも、街の歩行者用信号機にも、いろんなところで使われています。

そのカッコウの鳴き声ですが、音程は実際には何度だと思いますか?

時計とか信号機とかの人工物の模倣では、圧倒的にによく使われるのは長3度(例えばミとドの音程)と短3度(例えばファとレの音程)のどちらかですよね? 古今の「かっこう」と名付けられた音楽もみんなそうです。

でも私の耳には、もっと広い4度に聞こえるんです。鳴き出しの瞬間はミというかミ♭というかの音で、すぐにファまでグリッサンドしてスタッカート、それからドに4度跳躍です。

あなたはいかがですか? カッコウの鳴き声の音程は何度に聞こえますか?

 

さて、私のスタジオの近くには低い山があって、散歩していると時々カッコウの鳴き声が聞こえます。時にはスタジオにいながらにして聞こえたりもします。いい環境で仕事ができて幸せです。

けれど、この自然豊かな恵まれた環境を夏のうちにもっともっと味わっておけばよかったかな、と思いましたね。だって、本物のカッコウの鳴き声は来年の初夏までお預けですから。

過ぎたことは仕方がないですので、今からできることを満喫しますよ。今は秋を味わいます。これから冬鳥が渡ってくるのも楽しみです。ここ雪国の春は特に意識しなくても自動的に感動しますが、春に去っていく冬鳥たちのことも忘れないようにします。

ということでお聴き下さい。フランスの音楽家ダカンが作った「かっこう」です。

あなたのコメントをお待ちいたします

下のほうのコメント欄で、あなたのお考えをお聞かせくださると嬉しいです。
(システムの都合により、いただいたコメントがサイトに表示されるまでに最長1日程度お時間を頂戴する場合があります。あらかじめご承知くださいませ。)

季節はずれの鳥の声(ビデオ付き)” に対して7件のコメントがあります。

  1. aoki より:

    https://www.youtube.com/watch?v=tEU_Ls57xHw
    https://www.youtube.com/watch?v=BToFuGGSF1o
    https://www.youtube.com/watch?v=dZ8zjIXQ5aU

    ラソとしか表現できなくて。。。(一番下のは若い鳥?)
    絶対音感のあるかたってこれはどう聞こえるものなのでしょうか

    1. 八百板 正己 より:

      一番上は長3度、二番目は増4度!、一番下は4度ですね。
      ちなみに、カッコウの「コウ」の部分はどれもミくらいの高さです。

      1. aoki より:

        おそれいりました!

  2. Y.M. より:

    この曲は初めて聴きました。
    「カッコウの鳴き声を模倣した音楽」というと、ベートーヴェンの交響曲第6番のように
    長3度下降で表現している例が多いようですが、この曲だと短3度下降が多いですね。
    長調になる中間部の初めに長3度が聞こえるのは、雄が雌を呼ぼうとしているところに
    別の雄が割り込もうとしたみたいです。

    1. 八百板 正己 より:

      この曲も、ベートーヴェンの田園も、カッコウの「コウ」の部分が主音です。そうなると、長調なら長3度、短調なら短3度になりますね。
      私が知っているもっと古い曲だと(フレスコバルディとケルル)、どちらもト長調でレとシの短3度ばかりを使っています。

  3. はる より:

    こちらバロック曲だったと知りませんでした!子どもの頃に弾いた曲で懐かしく、練習する横で弟が鳥の真似して踊ってたのを思いだしました。先生の演奏ではリズムの揺れやトリルの風合いがとても素敵で新鮮です。

    1. 八百板 正己 より:

      ありがとうございます!
      弟さんもとても感受性豊かだったんですね。
      この曲は「いかにもバロック音楽」というのと違って、聴きやすく親しみやすいです。こういう曲も含めていろんな曲が作られていた中にバッハの音楽を置いてみると、また新しい気付きが得られて新鮮に思えます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です