アレグロでも速すぎないほうがいい

音楽用語の「アレグロ」って、どういう意味だと思いますか?

私も昔はこの言葉を「速く」と勘違いしていました。あなたはどうですか?

アレグロはイタリア語で「陽気に」という意味です。決して「速く」ではないんですね。この言葉に関するジョークがあります。イタリアに旅行に来た外国人が帰りの飛行機に乗り遅れそうになって、タクシーの運転手に「アレグロ!アレグロ!」と言ったら、タクシーの運転手は陽気にゆっくり走った、っていうんです。

今日ご紹介するバッハのこの曲も「アレグロ」ですが、この曲の場合はまた別の理由もあって、私はあえて少し遅めのテンポで弾きます。その理由とは、これがリュートのための曲だからです。

リュートという楽器は、音を出す仕組みからして、速い音は弾きにくいのだそうです。また、そんなに速く弾かなくても、一つ一つの音がとても存在感を持っているので、ある程度の速さで弾くだけでも十分に充実した音楽になります。

私はこのバッハのリュート曲をチェンバロで弾くわけですが、それでも一つ一つの音に存在感を込めて丁寧に弾くと、そのことによって何だかリュートで演奏しているような錯覚も生じるから不思議です。

ではお聴きいただきましょう。前回の続きで、バッハの「前奏曲、フーガとアレグロ 変ホ長調 BWV998」から、第3楽章のアレグロです。

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アレグロでも速すぎないほうがいい” に対して2件のコメントがあります。

  1. 芹澤克昇 より:

    作曲家一人一人の思いも様々ですよね。
    ベートーベンはallegro の後ろに、non troppo(ほどほどに)を付けることがとても多い。これは明らかに弾き飛ばしを戒めていると思います。
    またショパンは遅い曲に Adagio や Andante では無く、しばしば Lento と指定しました。。この方が奏者にはかえって親切だとも言えます。
    でも熱情ソナタのfinaleとか、プロの皆さん、凄い早弾きするんだよなぁ。
    これは私的な印象ですが、バッハも含めてバロックは弦楽器の方が鍵盤よりもTempoを早めに取る傾向を感じます。これも楽器の持つキャラクターの反映ではないか、と。四季の春とか、陽気さの表現 = それなりの速度感なのでは。ソロヴァイオリンのあのスピードは、重厚な構造の鍵盤楽器では到底ムリでしょう。八百板先生は沢山(バロックの)鍵盤を務められてますね。他の楽器奏者との速度感の違いとかあるのか否か、興味の湧くところです。

    1. 八百板 正己 より:

      コメントありがとうございます。
      ベートーヴェンがわざわざnon troppoを付けるというのは、allegroを「速く」と勘違いしている人が周りに多くなったことを反映しているのかもしれませんね。

      私自身は、クラヴィコードで弾く時にテンポが遅くなります。意識してそうしているのではないのですが、出てくる音と対話すると自然にそうなるのです。不思議です。

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