バッハの超大作中の極小の世界(写真付き)
4年前に私が呼びかけて設立した「新潟バッハ管弦楽団&合唱団」の13回目の公演が近付いています。今回はついにバッハの究極の超大作「マタイ受難曲」に挑戦するのです。2つのオーケストラと2つの合唱からなる、演奏時間3時間のとても大変な曲です。
もっとも、普通なら首都圏からプロのオーケストラと独唱者を買ってくるところを、私たちはすべてのパートをメンバーだけでまかなうので、いきなり全曲演奏というわけにはいきません。今回の公演では今の在籍メンバー数だけでも何とか形になりそうな後ろ3分の1を取り上げますが、それでも演奏時間1時間です。他に、まったく気分の異なる明るいカンタータ2曲も演奏します。
さて、写真はその超大作をたった3人で練習しているところです。物語の進行役として聖書の言葉だけを語るテノールの「福音史家」と、それを簡素な和音で支える通奏低音(チェロとチェンバロ)です。通常の練習日にはどうしても編成の大きな楽章に時間を割くことになるので、この極小編成の部分は私のお城「見附チェンバロスタジオ」で特別練習をしているのです。
「イエス・キリストが捕らえられて十字架にはりつけになって息を引き取る」という深刻な物語だけに、その物語を支えるチェロは規則違反のいけない音程だらけ。チェンバロが奏でる和音も減七やナポリ六の和音などの不協和音だらけです。福音史家は大量のドイツ語の嵐でとても大変ですが、通奏低音のほうは音を合わせるだけならすぐに弾けてしまいます。でも、こういう特殊な音楽は音を合わせるだけでは全く様になりません。聖書の物語の理解とバッハへの尊敬がなくては、何を練習していいのか目的が定まらないことでしょう。
バッハの作品は、どんな超大作でも極小の部分まで徹底して配慮が行き届いています。バッハからのメッセージを見逃さないように、初見でも弾ける簡単なところほど神経を張り詰めて音楽作りをしていきます。
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いよいよマタイ受難曲ですね!
ヨハネ受難曲の福音史家の伴奏についての記事で、
レチタティーヴォのチェンバロ伴奏の奥深さを知りましたが、
きっと今回も、福音史家・チェロと一緒に練習する前に、
歌詞を熟読吟味して研究されたことと思います。
コメントありがとうございます。
以前の記事を覚えていてくださって嬉しいです!
歌詞の意味は把握しているのですが、自分で喋る練習がまだ途上なのです。
あと一ヶ月、毎日歌詞を音読して本番に備えます。
Y.M.様 すごいですね!!!
よく先生の文を読まれ且つ覚えておられるのに
驚いております。
本当に、ありがたいことです。