華やかではないけれど美しい音楽
新潟県内は梅の花が盛りですね。雪国の春は梅、桜、桃がこれから次々に咲く素晴らしい季節です。
三条市内の自宅から私のお城「見附チェンバロスタジオ」へは、大きく分けて三通りのルートがあります。せっかく梅の花が盛りなんだから、花が咲いている道を通りたいですね。
一つめは国道8号線。でも、遠回りだし、トラックばっかりだし、景色もつまらないので使いません。
二つめは県道8号線。三条と見附の中心部をほぼまっすぐつなぐ山沿いの道です。カーブも信号も少なくスピードが出せて、最短の時間で着きます。それでいて景色もいいので、私が一番よく使う道です。
三つめは県道212号線という、本当に山の際を走る一車線の曲がりくねった道です。途中で県道8号線と合流しますが、その後でふたたび山際に分かれて見附の市道を走ります。この間信号は一個だけ。途中一ヶ所だけ二車線に分かれるところがある以外は、くねくねと曲がりくねって見通しもよくない一車線です。
ここ数週間、私はもっぱらこの曲がりくねったルートで通勤しています。時間は少し余計にかかりますし、歩行者に注意したり対向車とのすれ違いのために脇によけて止まったりする注意も要りますが、何といっても梅の花が楽しめます。
この曲がりくねったルートは、たぶん大昔から使われていたのでしょう。古くからの集落と畑が続き、至るところに梅の木が植えられています。庭にあるものの中には観賞用もあるかもしれませんが、畑にあるのも含めてほとんどが実を取るという実用目的で植えられているようです。花は盛りでも、決して華やかではありません。でも私はその華やかでないところがまた好きです。
さて、あなたはチェンバロの音楽は華やかだと思いますか?
同じバロック音楽でも、オペラのアリアを歌う歌手や、協奏曲のソロを披露するヴァイオリンなどに比べれば、チェンバロは華やかとは言わないのでしょうね。
もちろん、リュートやヴィオラ・ダ・ガンバなどに比べれば華やかな面もあるし、いかにもコンサート向きの華やかな曲(バッハのイタリア協奏曲やゴルトベルク変奏曲など)もあります。スカルラッティやヘンデルにも情熱的で華やかな曲はたくさんあります。
でも、いかにもコンサートで拍手喝采を受けるという曲以外のチェンバロ曲のほうが圧倒的に多いのです。コンサートのチラシに曲名を載せても全然関心を持ってもらえないようなものばかりです。華やかではないけれど、そして特に初めて聴くときにはパッとしないかもしれないけれど、そのつもりになって付き合ううちに、じわーっとその美しさが心にしみてきます。まるで畑に植えられた実用目的の梅のように。
そういう、華やかではないけれど美しい曲に、どうやったら多くの聴き手の方にめぐり合っていただけるでしょうか? それは、とりあえず私を信じていただいて、私が「これはいいですよ」とお勧めする曲を聴いていただく。コンサートには、そういう役割もあると思うんです。
今、インターネットで検索すればどんな曲もそれなりの演奏が無料で聴ける時代です。でも、どういう曲があるのか知らなければ検索のしようもありませんよね。その美しい世界の道案内をするのも私の役割と意識して、知られざる曲も積極的にご紹介していきます。
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新潟県立図書館にはNAXOS MUSIC LIBRARY というものがあり、利用者登録していれば無料で聴き放題なので、よく利用しています。ただあまりに膨大な数の曲や演奏が収録されているので、道案内がないと行き当たりばったり・・・
いろんなコンサートでとりあげられた曲を取りかかりにして聴いていくという方法があるのだな、と気づきました。『これを聴いて欲しい』という思いで演奏者はプログラムに載せたのでしょうから。
これからはそうしたアプローチも試してみます。
コメントありがとうございます。
そうですか。県立図書館でナクソスが聴き放題とは知りませんでした。それなら、近くにお住まいの方は本当に便利でいいですね!
ナクソスというレーベル自体が、知られざるレパートリーを網羅して紹介するというコンセプトで始まったと聞いています。その膨大なライブラリーに分け入っていくご自分なりの戦略をいろいろ試みて、どうぞ有効に活用してください。