初めての調律法を試す

11月6日の本番を間近に控えて、すべての用事を投げ出して7時間練習しました。ああ幸せ!

ほかに共演者がいるときには、普段平均律のピアノと合わせることの多い共演者が戸惑ってしまわないように、チェンバロの調律はあまり平均律から離れすぎないようにしているのです。でも今回はすごく久しぶりのチェンバロ独奏です。しかもプログラムはルネサンス時代の曲から始まります。これはぜひ調律を工夫しなくちゃ!

時代をさかのぼると、鍵盤楽器の調律法は「中全音律」というものに一旦落ち着きます。パレストリーナのア・カペラの合唱のように、3度の音程が完全にハモる美しさは、一度経験すると抜け出せなくなる魔力を備えています。でも、バロック時代の途中からその調律法では演奏不能な転調が出てきて破綻します。実際の歴史では、保守的な場での保守的な曲では昔ながらの中全音律が、実験が許される場での前衛的な曲ではさまざまな実験的な調律法が試されました。

今回は中全音律が当たり前だったルネサンス時代の曲から、最後はヘンデルやバッハに至りますから、ヘンデルやバッハがちゃんと弾ける調律法でもある必要があります。幸い、平均律クラヴィーア曲集のような極端な調の曲は弾きませんから、いつものソロコンサートよりも割と中全音律に近づけることができます。

で、歴史的な書物に残された調律法にこだわらずに、それでも実際に使われたであろう調律法を工夫してみました。

C-G、G-D、D-A、A-E、E-H:1/4コンマ狭い5度
C-F、F-B、B-Es、H-Fis、Fis-Cis、Cis-Gis:純正5度
Es-Gis:ウルフ(極端に汚くて演奏に堪えない5度)

意味わかりませんよね。分からなくていいのです。ほとんど自己満足ですので。

こういう古い調律法で古い音楽を弾くと、作曲家が美しく鳴ってほしいと思った和音は限りなく美しく、逆に作曲家が悶える心の内を吐き出したような和音は胸が締め付けられるような濁った響きとなります。今回のプログラムでは、時代はかなり古いのに目を疑いたくなる過激な和音を使うフローベルガーが実に刺激的に響きます。逆に時代は一番新しいバッハのフランス組曲第1番が、深い悲しみを湛えてしっとりと響きます。

チェンバロの時代の調律法は、単に音が合っていればいいというレベルを超えて、音楽表現の大切な要素とも言えます。もちろんお客様はそんな細かいことは分からなくても構わないのですが、プロの料理人が人知れず調味料を吟味するように、プロのチェンバロ奏者は人知れず調律法を吟味します。それでこそ曲の持ち味をじゅうぶんに引き出すことができるというものです。

 

と言葉だけで説明しても無理がありますね。ご自分の耳で実際に響きを確かめてください。コンサートへのご来場を心からお待ち申し上げます。

コンサートの詳細はこちらをご覧下さい。

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初めての調律法を試す” に対して1件のコメントがあります。

  1. 家合映子 より:

    先生、がんばってください・(゜))<<。

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