「時間がない!」は禁句

練習すべき曲は山積み。けれど他にもすべき事が山積み。ああ、どうしよう!

でも「時間がない!」は禁句です。たとえ事実でも、そう言ってはいけないんです。

それは脳の仕組みから来ています。分かりやすい例で説明しましょう。

 

あなたはスキーをしますか? 大丈夫、あまり上手でないほうが実感が湧くと思いますから。滑っていて、目の前に木が現れたとします。スキーがあまり上手でなければ当然焦りますね。「ぶつかる!」と叫びます。すると、脳は「ぶつかる」という事柄に意識を集中します。目はしっかり木を捉え(こうして焦っている時って、木しか見えないものですよね)、よりによって真っ直ぐ木にぶつかるようにと滑る方向を調節し、そして目的は果たされます。

木にぶつからないための方法はこうです。

例えば「安全に転ぶには?」と叫びます。すると脳は、重心を下げて体を左右どちらかに傾けて、手足をくじかないように突っ張りながら横に倒れる、という、スキースクールで最初に習った転び方の動作に集中します。結果として、木にぶつかる前にちゃんと安全に転べます。

または「確実に木をよけるには?」と叫びます。すると脳は、スキースクールでしっかり教え込まれた急ターンのやり方に集中し、結果として、木をよけることができます。

 

「時間がない!」も同じことです。そう言った途端に、脳には「私には時間はないのだ」ということが不変の真実として刷り込まれます。そして、時間がないことを証明する言い訳が次から次へと浮かんできて、頭の中はそんなことで占領されてしまいます。あらゆる解決の可能性を自ら遮断する思考停止状態です。

では、「時間がない!」を言い換えてみましょう。

例えば「見過ごしていた細切れ時間はどこにある?」と問います。すると、30分とか1時間といったまとまった時間はなくても、10分程度の細切れ時間が1日に5回も10回も見つけられたりします。

または「どうすれば練習の効率を何倍にも高められるかな?」と問います。すると、具体的な方法は書ききれないのでやめますが、それこそいくらでも方法はあります。

こういうのも効果抜群ですよ。「最善を尽くして、少しでも目標に近付いているんだから、私は立派だ」すると、自尊心が高まり、短い時間の練習でも最大の効果を上げることができます。

 

今日は「時間がない」という言葉について考えましたが、同じことは他のどんな否定的な言葉にも当てはまります。

「疲れた」ではなく「どうすればもっと元気になるかな?」

「難しくて弾けない」ではなく「練習をどう工夫すれば弾けるようになるかな?」

「雨が降ってムカつく」ではなく「雨の日のすてきな点はどこかな?」

もちろん、こういう前向きな考え方をするには意識して練習を積む必要があります。放っておけば人はどうしたって物事を否定的に捉えるものです。それは生存のための本能として、遺伝子に組み込まれているからです。人が否定的なことを考えると、爬虫類のときに発達した古い脳に支配されます。戦うか?逃げるか?の二者択一を迫られた緊急事態とみなして、創造的なアイデアをつかさどる大脳は活動を停止するのです。

 

まとめると、

  1. 否定的な言葉を使うのはやめましょう。否定的な言葉は大脳の思考停止を生み、解決の可能性が閉ざされます。
  2. 否定的な言葉の代わりに「どうすれば○○ができるかな?」と言い換えましょう。大脳は解決策を探し始めます。そして、殆どの場合に何らかの解決策が見つかります。

せっかく人間として生まれたんですから、本能の言いなりではなく、知恵を働かせて幸せに生きたいものですね。

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「時間がない!」は禁句” に対して1件のコメントがあります。

  1. T.H より:

    あまり「脳」のことは考えたことはないのですが、不思議なもの(?)なんですね。

    1)1.否定的な言葉を使うのはやめましょう。否定的な言葉は大脳の思考停止を生み、解決の可能性が閉ざされます。
    2)2.否定的な言葉の代わりに「どうすれば○○ができるかな?」と言い換えましょう。大脳は解決策を探し始めます。そして、殆どの場合に何らかの解決策が見つかります。

    この二つが脳の中にあり、どちらかを選ぶこともできる!

    これからはいろいろ考えて一番良さそうな考えを選んでいこうと思います。見えないけれど不思議なものがあるのですね! 意識しないうちに今までも選んできたのかもしれませんが。

    1. 八百板 正己 より:

      コメントありがとうございます。
      脳のことが分かってきたのはここ数十年くらいのことらしいですよ。本当に不思議な世界ですね。

  2. higurasi より:

    ほんとですね、言霊の国、日本。。。発した言葉が成就することは何度も体験して参りました。
    自分が自分にかけている催眠術で日常は進行しているかも、などとも感じております。
    また、「時間がない」のはある意味幸せな状態と言えるかも知れません。
    熟年者が心身健康で生きているためには「キョウイク」と「きょうよう」が重要だとよく耳に致します。
    今日、行くところがあって、今日、しなくてはいけない用事があること、これがとても大切であると。。。
    充実感、安堵感、達成感を交互に得ながら「時間が足りない」と思いながら生きていられたら、とても贅沢な人生!

    1. 八百板 正己 より:

      コメントありがとうございます。

      なるほど「言霊」ですか。太古の昔から信じられてきた言霊も、科学的な根拠が与えられれば、また脚光を浴びて人々の幸せに役立つようになるかもしれませんね。

      「時間がないのは幸せ」とは、何と前向きな考え方でしょう! 私も見習います。

  3. 家合映子 より:

    八百板先生、タイムリーなアドヴァイス、ありがとうございます。今の私にとっては、心の向きを方向転換すれば良いのかなあ、と思いました。そして健全な自尊心ーそういうものが持てればどんなに良いかと思います。本当に試されますね。ありがとうございます。

    1. 八百板 正己 より:

      家合さん、コメントありがとうございます。

      自尊心ということについて私が初めに理解を深めたのは育児書でした。勉強を進めるにつれて、大人だって同じ問題を抱えていることも知りました。大人はもう親に頼れないので、自分で自分の自尊心を高めてあげる必要があるんですね。

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