常軌を逸したバッハのソナタ(楽譜付き)

ヴァイオリンの風岡さんに遠路高崎からおいでいただいて合わせをしました。が、バッハの常軌を逸した音楽に翻弄されて、写真を撮り忘れてしまいました。代わりに楽譜でご勘弁を。

風岡さんも私も、この「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BWV1023」は初めての経験です。というか、もしかして新潟県初演? というくらい演奏されない曲です。でも、楽譜を見ると目が点になるとんでもない曲!

始めの楽譜、上段がヴァイオリン、下段がチェンバロです。チェンバロが無くてもいいくらいに存在感を抹消されています。YouTubeなどでいろいろ聴くと、チェンバロが豪快な和音で応酬している演奏もありますが、バッハが「和音を弾くな」と書いているんだから私は弾きませんよ。

この楽譜の4段目以下は無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番の前奏曲にそっくりです。そう、こういうチェンバロの存在感を抹消した曲の延長線上に、無伴奏ヴァイオリン曲が成立したんですね。

次の楽譜は第3楽章のアルマンド。今度はチェンバロがありえないくらい複雑な数字で埋め尽くされています。ほとんどの時間で不協和音が「これでもか」と鳴り続けます。

ちなみに、アルファベットの書き込みは私が右手で弾く予定の音をメモしたものです。通奏低音の心得のある人にとってはすごいお宝情報なのですけれど、分からない方は気になさらないで大丈夫です。

このとんでもない楽章、YouTubeでいろいろ聴いてみましたが、みんなテンポが速すぎじゃないですか? バッハが書いたこんなに複雑な不協和音の連続を、その速いテンポで弾くために適当に無視していますよ。確かに、ヴァイオリンのパートだけ見ると速く弾きたくなるのも分かります。でも、バッハ自身がチェンバロを弾いたであろうこの曲で、ヴァイオリン奏者の言いなりになってテンポを上げるために不協和音を省くなんて、私にはできません。それに、バッハがチェンバロやリュートなどのために作った何十曲ものアルマンドのどれもが、もっと遅いテンポですよ。

というわけで、YouTubeで聴けるたくさんの演奏に納得できない私としては、今週金曜日の私たちのコンサートをぜひともお聴きいただきたいのです。他人の真似ではない、自分との対話から生み出される誠実なステージをお約束いたします。

コンサートの詳細はこちらのページをご覧下さい。ご来場を心からお待ち申し上げます。

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常軌を逸したバッハのソナタ(楽譜付き)” に対して2件のコメントがあります。

  1. 塚田泰司 より:

    今回の演奏会は、出席できず、残念です。ご成功をお祈りいたします。

    1. 八百板 正己 より:

      ご丁寧にありがとうございます。

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