はじめに

このページは、いつものようなブログではありません。それに、ウェブサイトのどのページからもリンクしていません。

なぜなら、ここで打ち明けている内容は一般の人にはあまり知られたくない事だからです。

あなたは私の本を買ってくださり、その後1ヶ月以上にわたって私からのEメールを受け取ってくださっています。だから特別に、私の本に欠けている大きな問題について書いたこのページをお伝えするのです。

「表情は後から加えるものではない」とは言うけれど

お手元に私の本がありましたら、79ページをご覧ください。こういう記述があります。

曲の表情は一通り最後まで通して弾けるようになった後から加えるものだと思っていませんか? それは大変な無駄ですよ。だって、通して弾けるようになるまでの長期間の練習によって、小脳は機械的に弾くときの筋肉の動きをしっかりと記憶してしまうのですから。(中略)そんな無駄をしないために、片手練習や1拍ずつの両手練習の段階からきちんと表情をつけることです。

(書籍「超効率バッハ練習法」79ページ)

これを本当にきちんと実践するためには、曲を練習し始める段階から「ここでフレーズを切って」「これらの音は滑らかにつなげて」「この音は切り離してアクセントをつけて」といった分析と解釈がある程度確立していることが前提となります。だって、「短く切ればいい」と思ってずっと練習していたのに、後になって「やっぱり滑らかにつなげた方がいい」というような変更が大量に現れたら、練習の効率はとても悪くなってしまいますよね。

その問題に対して、本の続きの部分で私はこのようにしか書いていません。

表情は無理やり頭で考え出さなくても、心を清らかにして練習している間にふと気がつくものですし、「素晴らしいな」と感じながら練習している時にはひとりでに美しい表情がついています。

(書籍「超効率バッハ練習法」79ページ)

じつは、この章(9.2 どんな細かい部分にも美を見出す)の趣旨は「機械的に練習しないで、歌心をもって芸術的に練習しましょう」ということなので、私はこれ以上深入りしなかったのです。それに、個々の曲の解釈に関わる問題は扱う範囲があまりに広く、本の1章を割くくらいでは到底解説できるものではありません。本一冊を丸々費やしても不十分でしょう。そもそも、文字だけで的確に説明できることなのか? との疑問もあります。

せっかく練習しても後で全部やり直し・・・

せっかく練習したのに、後でフレージングやスラーやスタッカートなどがことごとく変更になるのでは、練習の効率も悪いですし、いい気持ちもしませんね。

それに、どういう表情で練習していいのか自信が無ければ、練習にも迷いが生じて集中できないと思います。「どうせまた後で全部やり直しになるんだ・・・」そんな心理状態では、同じ時間をかけて練習しても身に付かないことでしょう。

もっと言えば、「どうせまたやり直し」という気持ちは、練習中の音の間違いに無神経になることにもつながるでしょう。これがダメだということは本の始めのほう(21ページ)に書きましたね。

つまり、本当にバッハの練習効率を最大に高めようと思ったら、私の本だけでは不十分なのです。

先生を頼りにしてください

そんな無駄をしないために、あなたが音楽教室などでレッスンを受けているなら、ぜひ先生を頼りにしてください。新しい曲をもらったらその場で、大まかなフレージングやアーティキュレーションなどをあらかじめ教えてほしい、と先生に頼んでみましょう。それがダメでも、せめて片手ずつの練習が終わった段階で教えてもらえるように交渉しましょう。

バッハの曲では、両手を合わせた練習を始めてしまうと、後で変えるのが大変です。声部数の多い複雑な曲ほど大変です。あなたが先生に付かずに独学で勉強しているなら、ある程度のやり直しは覚悟しなければなりません。それでも、できるだけ練習の早い段階で方向を定めるように意識することによって、その種のやり直しによる時間の無駄をずいぶん減らせるようになるでしょう。

 

【予告】
明日も引き続き、この問題に関係するメールをお送りします。バッハの弾き方についての考え方がピアノ教室の先生と合わずに失望して、教室を辞めてしまった少年の実話です。期間限定の無料特典もご用意しているので、忘れずにメールをご覧ください。