太陽系の広さを感じさせるバッハの対位法

台風が来るというので、今日はすごい暑さでしたね! 季節が2ヶ月も戻ったみたいです。

台風が来るのに、空は青く澄み渡っています。強い風が空気中の塵を吹き飛ばしているからでしょうか。きれいな青空に、ちょっと見慣れない感じの雲が所々に広がり、かなり高いところにあるのに結構速く動いています。西のほうに台風がいると分かっているから、「この雲がみんな台風の中心に向かって渦を巻きながら吸い込まれている最中なんだ」とイメージしてみました。

すごいスケール感!

台風の中心に向かって、日本列島的な規模で渦巻く雲の連なりの一部を見上げているんだと思ったら、SF映画に出てくるアニメーションの中にいるような、そのまま空に吸い込まれそうな、不思議な感覚に襲われました。

 

似たような、でももっと雄大なスケール感を覚えたときの話を聞いてください。

何年前だったでしょうか、群馬県桐生市での弦楽アンサンブルのコンサートに呼ばれたときのことです。プログラムの中で、バッハの「フーガの技法」から「変形主題とその転回に基づく3種類の時価による反行フーガ」が弦楽合奏で演奏されました(私は降り番)。

バッハ晩年の「フーガの技法」は、対位法の大家としての人生の総決算です。フーガの主題に、別の声部ではその音の長さを2倍に伸ばして上下の動きを逆さまにしたものを重ね、同時にまた別の声部でその音の長さを4倍に伸ばして上下の動きを逆さまにしたものを重ね、といったことを繰り返して進んでいく、信じられないほど複雑なフーガです。

バッハに限らず、昔の音楽家は奇をてらってそんなことをしたのではないし、作曲技術の自慢をするためでもありませんでした。それは、宇宙をめぐる星々が、互いに異なる周期で動きながらも、人智を超えた完全な調和をなして運行しているんだという、古代ギリシャのピタゴラス学派由来の宇宙観を音楽で表現したものなのです。

舞台袖でその反行フーガを聴きながら、私は惑星探査機が木星や土星に接近する様子を描いた科学番組のアニメーションの中にいるような感覚に襲われました。

ものすごいスケール感!!

一口に惑星と言っても、太陽に一番近い水星はたった3ヶ月で太陽を回ってしまいますが、土星は30年かかってやっと太陽を一回りです。元の主題がコロコロとすばやく音を奏でるのに対して、音の長さを4倍に伸ばした声部は、まるで巨大な土星がものすごくゆっくりと動いているかのようでした。

 

ついでなので、もっともっと巨大なスケール感を覚える実験を紹介しましょう。

日本は豊かになりすぎて、夜空を見上げてもなかなか天の川を見ることができませんが、もし都会から遠く離れた漆黒の星空を見るチャンスがあったらやってみてください。

天の川の傾きに合わせて頭を傾けます。自分の視野の右端から左端へ天の川がまっすぐ横切るようにします。そして「今自分は銀河系の中にいてその端から端までを視野に収めているんだ」と認識するのです。もし夏の宵か春の夜中過ぎなら、いて座のあたりで天の川が濃く太く膨らんでいるのが見えます。これが銀河系中心部の膨らみですから、なおさらリアルに銀河系の巨大なスケール感に浸ることができますよ。

ちなみに太陽も地球も、この銀河系の中を2億年以上かけて一回りしているそうです。

あなたのコメントをお待ちいたします

ご感想、ご質問、ご意見など、何でもお寄せください。
あなたのコメントがきっかけとなって、音楽を愛する皆様の交流の場になったら素晴らしいと思うのです。
(なお、システムの都合により、いただいたコメントがサイトに表示されるまでに最長1日程度お時間を頂戴する場合があります。あらかじめご承知くださいませ。)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です